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連載

第27回 青森の春

前野健太(シンガーソングライター/俳優/エッセイスト)

 5月末、ギターを背負って北へ向かった。
 新幹線に乗って新青森駅、そこから奥羽本線で弘前まで。
 奥羽本線の新青森駅のホームで列車を待っていると、後ろから声をかけられた。今から前野さんのライブに行きます、と。ありがたい。秋田から来たとのこと。しかし乗り込んだ列車は1両編成。ずっとその方の気配を感じながら、少々気まずい小旅行となった。お互い様に。

 列車を降りて改札へ向かうと、主催のKさんが待っていた。青森でライブできるところどこかないですかね、と相談を持ちかけた折、もしよかったら弘前で、僕主催でやりますよ、と買って出てくれたKさん。ありがたく乗っからせてもらい、今回のイベントが決まった。
 会場はKさんの働く「弘前れんが倉庫美術館」隣接のカフェ。早めに着いて展覧会を見させてもらう約束をしていたが、その前にお腹どうですか、ということで、駅近くの市場のようなところへ。車で着いたのは「虹のマート」。

生き活き市場、虹のマート

 観光スポットという感じはなく、地元の人たちが普段使いしている印象で、新鮮な魚介や野菜が沢山並んでいた。Kさんおすすめの海鮮丼を買って、小さな飲食スペースで食べた。惣菜屋さんもあり、出来たばかりのコロッケ、いや、名物のイカメンチをご馳走になる。こういう場所はずっと続いてほしいと思う。虹のマート内のコーヒー屋さんに今回のライブのチラシが置いてある。ありがたい。車で会場へ向かう。

「弘前れんが倉庫美術館」は、以前はシードル工場、りんごのお酒を造る工場だったものを、改装して作られたとのこと。大きな奈良美智さんの犬のオブジェが入り口にあり、迫力がある。でかい犬。倉庫になっていた場所で奈良さんが地元の人たちと展覧会を作り上げ、それが美術館誕生のきっかけになったらしい。使われなくなった煉瓦造りの建物に、また人が出入りし、息を吹き返す。美術館の2階には図書スペースがあり、ここで地元の高校生が勉強をしていた。羨ましいと思った。写真集や画集をめくりながら、膨らむものがあるだろう。この風景の中で。

弘前れんが倉庫美術館。左の建物がカフェ

著者情報

シンガーソングライター/俳優/エッセイスト

前野健太

まえの けんた

1979年2月6日生まれ、埼玉県入間市出身。2007年『ロマンスカー』によりデビュー。ライヴ活動を精力的に行い、「FUJI ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」など音楽フェスへの出演を重ねる。俳優活動においては、主演映画『ライブテープ』が第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞。NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』他、TVドラマ、CM、映画、舞台に出演。エッセイ集『百年後』を刊行するなど、文筆活動にもファンが多く、他アーティストへの楽曲・歌詞提供も行う。最新アルバムは『営業中』(2024年)。文芸誌『すばる』ではエッセイ「グラサン便り」を2014年から2022年まで約8年にわたり連載。

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