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連載

連載書籍化スペシャル ゲスト/ニシダ(ラランド)

鴻池留衣(小説家)

ニシダ(芸人/小説家)

本サイトで連載された「純文学のナゾを解け」が、6月26日『純文学って何だよ』として書籍化される。それを記念して人気お笑いコンビ・ラランドとして活躍する一方、小説作品の発表が続くニシダさんをゲストに迎えた。お笑いの世界の変わった評価軸について、 執筆スタイルや、なぜ小説を書くのか? など……。多岐にわたる熱い議論が展開される!

 

純文学をどう定義する?

鴻池 僕、初対面の人とは、緊張してしゃべれないんですよ。酒飲まないとダメなんです。ニシダさんは、お酒は?

ニシダ 自分はお酒がダメで。体質に合わないんです。

鴻池 お笑いのお仕事だと、初対面の人とたくさん会うんじゃないですか?

ニシダ 会いますね。自分も初対面の人との会話は難しいです。なので、テレビのロケとかで、5時間街の人に聞き込みする企画とかありますけど大変です。でも、酒はそういう意味で便利です。だって、夜の新橋のロケとかヤバい。みんな酔っぱらっているから、「それ社外秘でしょう」みたいなことバンバン言う(笑)。

鴻池 やっぱ、そうですか(笑)。いや、この対談企画も酒にかなり頼ってます。いままで、9人のゲストの方に出てもらって、今度、本になりますけど、だいぶ、オープンに語ってくださいましたよ。

ニシダ お酒は便利ですね。でも、自分は酒飲まないから友達も少ないんですよ。

鴻池 これは偏見だと思いますけど、お笑い芸人の方って、陽キャでめっちゃ友達いて、学校のクラスの中で一番の人気者だったから、芸人になったみたいなイメージありますけどね。

ニシダ 確かにそういう陽キャでクラスの人気者だったみたいな、たとえば、FUJIWARAのフジモン(藤本敏史)さんみたいなタイプもいれば、クラスの陽キャの端っこに隠れてお笑い芸人の深夜ラジオ聞いてますみたいなタイプもいる。少人数の仲間内だけで、自分が面白いと思うことを発表していたみたいな人も多いですよ。テレビの収録終わったら、一言もしゃべらない人もいますしね。

鴻池 ちなみにニシダさんはどっち?

ニシダ 明るくはないですね。何せ、本好きって言ってますし(笑)。

鴻池 しかも純文学が好きなんですよね?

ニシダ そうですね。ところで、いままで9人の小説家の方々と対談して、純文学は何かの答えは出ましたか?

鴻池 これから本出るのに言うのも何ですが、本を読んでも「純文学とは何か」の答えは出ませんね(笑)。

ニシダ 純文学って本当によくわからない分類ですよね。話の内容としては、SFのときもあれば、サスペンスのときもあるじゃないですか。

鴻池 そうなんですよ。ニシダさんの中で、純文学の基準、条件みたいなものはありますか?

ニシダ 学生の頃は、「文芸誌に載っている作品が純文学です」という答えでいいんじゃないかと思ってました。自分の中で、「純文学とは何か?」の答えの変遷がある気がする。

鴻池 答えが変わってきたということですね。

ニシダ ええ、ひとつ有力だと思ったのは、読み返したい、再読したいと思わせる小説が純文学なのではないかと。エンタメ作品は、純文学に比べて再読する回数が少ない気がしました。

鴻池 それ、僕も1回たどり着いた答えです。

ニシダ やっぱり、そうですか。

鴻池 本の「イントロダクション」で自分なりの純文学の定義を書いているんですけど、純文学を定義するひとつの要件にネタバレが機能しないと書きました。

ニシダ そうですね。エンタメ作品の場合は、ある程度、オチとかわかってしまうと読み返せない。自分は小川洋子さんの『ことり』という作品が好きで、毎年、2回ぐらい読み返すんです。でも、東野圭吾さんのミステリー小説好きだけど、あんまり読み返さないんじゃないかと。

鴻池 ミステリーは特にそうかも。

ニシダ 読み終わって「面白かったな~」って満足して終わり。でも、それが答えだと思っていたときに東野さんの『容疑者Xの献身』を久しぶりに読み返したら、これが、まぁ、面白かったんですよ(笑)。

鴻池 面白かったんだ(笑)。

ニシダ 「やっぱ、すげーな東野圭吾は」と思うと同時に、この答えが弱いことにも気づいた。

鴻池 でも、読み返すスパンはエンタメのほうが長くないですか?

ニシダ ああ、そうかもしれませんね。

鴻池 僕も馳星周さんの小説が好きなんだけど、読んでから10年ぐらい経って読み返すと面白いんですよ。でも、読んでから年数が経たないと、まだ覚えていて楽しめない気がする。

ニシダ 確かに。それに比べて、純文学はあまり覚えられないのかも。

鴻池 なんか忘れているから、半年後でも楽しめる。

ニシダ エンタメ作品は小説世界の完成図ができているんじゃないかとも思うんですよ。エンタメの場合、読者は、その完成図を情報として受け取れる。純文学は小説世界の設計図は受け取れるけど、読者が自分で読みながら世界を作っていく感じなんじゃないかな。そんなに詳しく書いていないから、主人公はこういう感情なんじゃないかと読者が想像して読む。

鴻池 なんて、うまいたとえなんだ。そうですよ! 答えが出ちゃった(笑)。

ニシダ いやいや(笑)。純文学は設計図しかないから覚えていない。

鴻池 設計図だけだから、小説世界の完成図は読者によってバラバラ。下手したら、読んでいるときのコンディションによって微妙に変わるかも。

ニシダ そうなんです。だから、少し時間が経っただけでも、読んだ感想が違う。

鴻池 それが純文学だ!

ニシダ そんな気がしてきました。

鴻池 ただ、そうなってくると純文学を書きたくても書けないですね。読者がいないと作品が完成しないから。

ニシダ そこはまた難しい問題ですよね。

著者情報

小説家

鴻池留衣

こうのいけるい

1987年埼玉県川口市生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科中退。2016年「二人組み」で新潮新人賞を受賞してデビュー。著作に『ナイス☆エイジ』(新潮社 2018年)、『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』(新潮社 2019年)がある。

芸人/小説家

ニシダ

にしだ

1994年山口県生まれ。2014年、サーヤとともにお笑いコンビ「ラランド」を結成。
著書に『不器用で』、『ただ君に幸あらんことを』(KADOKAWA)がある。

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