この国で、「女子」でいることはかなりしんどい。その1
フェミニズムとか、ジェンダーとか、女子に向けられる「呪いの言葉」とかについて3人で話してみた!
雨宮処凛さんの著書『「女子」という呪い』の刊行を記念して行われたトークセッション(2018年5月22日に実施。@神楽坂モノガタリ)。漫画家・ライターとして活躍する田房永子さん、作家・ラブピースクラブ代表の北原みのりさんをゲストにお迎えした。昨今のいろいろなセクハラ、#MeToo問題をテーマに話は盛り上がり、会場はヒートアップ! 女性も男性も立ち止まって考えてもらいたいと、3回にわたり採録をお届けします。

エラぶっているオジサンには、「虚」を感じる
北原 雨宮さんとは、たぶん15、16年ぐらい前から仕事を通じて知り合いでしたよね。だけど、フェミニズムとかジェンダーについて話をするのは、じつは今回が初めてで、今日はすごく楽しみにして来ました。
この『「女子」という呪い』という本には、(私が運営している)ラブピースクラブのサイトで書いていただいたエッセー(「化粧する女、化粧する男」)も収録されているんですよね。今回この本を手にした時、表紙のイメージもあると思うのですが、雨宮さんがポジティブにフェミ(ニズム)を語ったんだなと思い込みました。ところが、読んで驚きました。死者の話がとても多かった。ライターの井島ちづるさんや、電通社員で過労死した高橋まつりさんなど、全ての章で若い女性たちの死が語られる……そして、その死は「女性であること」と全く無関係ではない。そういう死を隣で寄り添うように見てきた雨宮さんが、女性の問題をなぜ今まで書かなかったのか、むしろ不思議でした。苦境を乗り越えた女たちは「生き残った者=サバイバー」ですよね。雨宮さん自身も、サバイバーだと思いました。
雨宮 ありがとうございます。お二人とはぜひ話をしたいとずっと思っていました。北原さんはずっとフェミニズムの活動をしてきた方。昨年(2017年)『日本のフェミニズム』っていう本を出版なさっていて、読みました。とても勉強になりました。
田房さんとは、今日初めてお会いします。つい先日、朝日新聞夕刊に田房さんが描いた「オトナの保健室」コーナーの漫画(2018年4月17日)で、セクハラを理解できないオッサンたちについての分析がとても鋭い、とネット上ですごく話題になりましたよね。
田房 もう二年前ぐらいから感じていたことを、最近それが表面に表れてきたなと思ったので、この前連載漫画に描いたんですが……。私はエライ感じがするオジサンが話しているのを見ると、すごい「虚」を感じるんですね、虚。
雨宮 空虚の虚。
田房 (オジサンは)立派に見えても、その人自身の心の中ってどうなっているのかなと不安になってくるんですよ。
私は心理学が好きなので、よく(そういう本を)読んだりするんですけど、「相手に対しての言動は、自分が自分自身に対してやっていることだ」という内容が出てくるんですね。子どもに対して「おまえはダメだ」と言っている人は、自分のことをダメだと思っている。こんなふうに、相手を見ると鏡みたいに自分のことが映って見えてしまう、っていうのが、人にはよく起こる。そういう視点で考えたら、オジサンたちは自分のことを人間扱いするって感覚を持っていないんじゃないかと思います。
北原 「週刊朝日」で田房さんがイラストを描いて、私が文章を書く連載もやっているのですが――(最近思ったことは)フェミニズムの問題って女性問題と言われるけれど、本当は加害者の問題で、男がなぜこういう状況になっているのかって考えるべきだと思う。やっぱり男自身がきちんと人間扱いされていない、そして、(他の人に対しても人間扱い)していない。さっき空虚っておっしゃったけれども、リアルな体の感覚を持たない男たちに、人権意識が育つわけないよね、と思う。

『「女子」という呪い』雨宮処凛 著(1100円+税)
女性にわざとぶつかったり、怒鳴り付けたりする男性、けっこういるよね?
北原 女はね、いきなり他人に怒鳴られたり、そんな怖い思いを日常的にしていると思う。
田房 私も男の人に、ぶつかられるんですよね。駅とかで。
北原 タックルされるよね。
田房 カバンでバーンってやられて、もうクルリンって回っちゃったりするんですよ。
北原 そう、だから、日大のアメフトタックル問題は、(関西学院の)被害学生の気持ちがよく分かる。
田房 私たち、毎日あれと一緒ですよ。だからあの事件が大問題になって初めて、本当に後ろからタックルって超ヤバいんだって分かった。しかも、その後ツイッターで、駅でわざとぶつかる男の人がいると話題になって、みんなが被害に遭っていることも分かった。理由もなくぶつかられたり、叱られたり。
この間も、新宿の丸ノ内線の改札の前で、バカンとぶつかられて。その男はそのまま改札に入っていくから、思い切って「ぶつからないでください!」って言ったんですよ。そうしたら、その男性、メッチャ私に向かって怒ってて。
雨宮 こわーい。
北原 何で怒るの? 謝りもせず。
田房 その人、改札に入りながら、すごい怒った顔で私の方を見て「コノヤロー」みたいな感じで……たぶん「バカ」とか「ブス」とか罵声だと思うんですけど、私に向かって何か言って。私はそれが聞き取れないんだけど、その人の顔を見ながら改札の外側を歩いてて……。人混みの中、二人とも相手を探して見つめ合いながら歩いてる、っていう動きだけはトレンディードラマみたいな感じ。最終的に雑踏の中で、その人は「アーッ!!」て、映画の『プラトーン』のように天を仰いで反り返って、叫んだんですよ。
雨宮 何の叫び? それ。
北原 年は何歳ぐらいですか。
田房 私と同じぐらいですね、たぶん。身なりはきちんとした富裕層な感じの男性でした。反り返って叫んでいる姿を見た時に、「ぶつかられるかも」といつも恐怖心を持って歩いている私より、この人が感じてるストレスの方が5000倍ぐらい大きいんだなと感じたんですよね。ヤバいんだな、っていうか。
北原 ヤバいよ、相当。
田房 見知らぬ女へのタックルで、自分の抱えてるストレスを解消できるわけがない! 自分のストレスに対して、もうちょっと真面目に取り組んでほしいです。
雨宮 この前、斉藤章佳さんという精神保健福祉士の方が書いた『男が痴漢になる理由』っていう本を読んだら、まさにそれでした。痴漢は、ストレスを感じている男性が、満員電車の中で自分より圧倒的に力の弱い女性を支配するっていうか、攻撃するっていうか、むしゃくしゃした気持ちを弱くて抵抗しない人にぶつけたいっていう気持ちからやってしまうんだって書いてありました。
そういう支配欲の他にも、一週間頑張ったから自分へのご褒美に痴漢をしようみたいな人とか、ノルマ型みたいに今月の目標人数に達してないから、あと一人触らなきゃみたいな人もいるとか。
わざとぶつかる人も痴漢も、結局自分の気持ちやストレスを言語化しないのが原因なんじゃないですか。言語化したら何とか解決できるのに、何で(そういう男性は)できないんですかね。
北原 それは日本の男の何割なのかが、すごく気になる。だって、雨宮さんはぶつかられたことある?
雨宮 あるある、もちろんある。
北原 でしょう? 痴漢に遭ったことないとか、ぶつかられたことがない女の人って私の周りでは1割強ぐらいの割合だと思うのね。ということは、9割の女が電車とか駅、公共の施設とか空間で、見知らぬ男からの攻撃――それって別にぶつかられることだけじゃなくて、通りすがりに「ブス」とか「ババア」とか言われてストレスを吐き出されたり、性的なからかいを受けたり、一日イヤな気持ちになるようなことをされている。もうこれは、女にとってはテロじゃん! で、思うのは、ではいったい男の何割が加害者なってしまっているの? ということ。女性たちは(痴漢やわざとぶつかるといった行動を)やってもいい存在だと思われている。こんな社会に生きてたら、「フェミニスト」になりたくなくても、なっちゃいますよ。