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連載

新緑の頃に現れる親しみある甲虫 〜イノコヅチカメノコハムシ

第95回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 今年も新緑が美しい季節がやって来ました。アトリエの周りの田んぼは、今年は休耕の年。本来なら水を溜めたまま田んぼを休ませるのですが、最近はいろいろなものを植えるようになりました。ここ10年くらいは、大麦が主流です。大麦は6月には黄色くなって収穫できるので、5月は緑の中に穂が風に揺れていて爽やかな風景を見せてくれます。なので、一足早い初夏の気分を味わえるわけです。

休耕田を利用した麦畑。(撮影:今森元希)

「オーレリアンの庭」では、タンポポが綿毛になっています。雑木林のカタクリは、早くも実を膨らませています。初夏への移ろいの時間が刻々と流れているようです。
 アトリエのアプローチに生えるウワミズザクラやリョウブの若葉では、ヒメクロオトシブミたちが揺りかごづくりに余念がありません。葉っぱに卵を産みつけ、筒型に器用に巻いてゆきます。この行動はたいへん面白いので、中腰になって眺めていると時が経つのを忘れてしまいます。

アケビのツルが伸びる新緑の頃のアトリエ。(撮影:今森元希)

 そんな頃、さらに根気よく草むらを観察していると、風変わりな姿の虫を発見します。盛り上がった丸い背中をしていて、ぺったりと葉に張り付いています。これらはカメノコハムシたち。葉を食べる甲虫、ハムシの仲間なのですが、体が亀の甲羅のような形をしています。カメノコハムシの仲間には、ジンガサハムシのようにより扁平な形をした個性的な種類もいるのですが、やはり一番よく見かけるのは、一般的なカメノコハムシであるイノコヅチカメノコハムシでしょう。

葉の上に止まるイノコヅチカメノコハムシ。(撮影:今森元希)

 このハムシは、名前のとおりイノコヅチの葉を食べます。イノコヅチは田畑の脇や道端など、どこにでも見られる植物です。イノコヅチには、ヒナタイノコヅチとヒカゲイノコヅチがあり、まさに、日なたでも日陰でも、どこにでも対応できる万能型のたくましい雑草です。イノコヅチは秋口に地味な花を咲かせ、その後、ひっつき虫のような種子をつけるので、農家の人には嫌がられます。そんな生命力のある植物を食べて育つイノコヅチカメノコハムシに私は親しみを感じます。
 ところで、この虫にさらに近づいて見ると、体が金色に輝いていることに気づきます。見る角度を変えると、体の一部がキラリと黄金色の光を放つので、ちょっと感動します。金色の輝きは、日本では、蝶の蛹(さなぎ)やカミキリムシの仲間、カメムシの仲間などに見られますが、この高貴さは一体何のためにあるのでしょうか。
 今日もアトリエの庭で、葉の上で休むイノコヅチカメノコハムシに出会いました。

大麦は、瓶に飾るとたいへん美しい。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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