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連載

春を待ちわびる鳥たち 〜ヒヨドリ

第93回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 天候が穏やかな日が増えてきました。比良山地(ひらさんち)にはまだ残雪が光っていますが、畑の土手は暖かくて、ツクシたちが元気よく背比べをしています。雑木林に目をやると、落ち葉が身をくねらせています。わずかな風でゆらゆら動く様子は、まるで春の訪れを喜んでいるようです。

土手から顔を出したツクシ。(撮影:今森元希)

 春を待ちわびているのは鳥たちも同じです。特に花が好きな鳥にとっては心が躍る季節ではないでしょうか。花好きの鳥はたくさんいますが、その代表は何と言ってもヒヨドリだと思います。
 ヒヨドリは、田園や雑木林、公園などでもよく見られる身近な鳥です。2年前まで私が住んでいた市街地にある町屋造りの家の中庭にもよくやって来ました。その時はヤブツバキの花に顔を入れている姿をよく見ました。ミカンやリンゴなどを板の上に置いておくと、それを食べにやって来ました。この鳥は甘いものには目がないようです。
 子供の頃から中庭で身近に見てきた鳥なので、私はとても愛着があります。当時は、冬にしか見られない鳥、という印象がありましたが、最近は一年中出会えるようになりました。これは温暖化のせいでしょうか。聞くところによると、この鳥は朝鮮半島や中国などでも見られるものの、分布としては日本が一番広くてポピュラーだということです。そういう意味では、たいへん貴重な鳥と言えるかもしれません。

落葉樹の枝で羽を休めるヒヨドリ。(撮影:今森元希)

 今年は、「オーレリアンの庭」のロウバイがヒヨドリたちのレストランになってしまいました。黄色い花びらがほころび始めると、それを次々とついばんでしまいます。よく見ていると、花びらの部分はパラパラと落下するので、どうも花の基部にある蜜腺のあたりの甘さを味わっているようです。花がなくなるので寂しいですが、一方でヒヨドリたちが遊ぶ様子を眼の前で観察できる喜びもありました。

ロウバイの花を食べるヒヨドリ。(撮影:今森元希)

 ただし、残念なことに、ヒヨドリは害鳥扱いされることもあります。カラスと同じくらい頭が良くて手に負えないと、農家の人に毛嫌いされることが多いのです。
 そう言う私も昨年は、ヒヨドリのゲリラ攻撃に遭いました。自宅裏の畑のブロッコリーをすべて食べられてしまったのです。彼らにとっては、柔らかい蕾(つぼみ)がおいしいのでしょう。この時は10羽ほどが毎日飛んできたので、一畝(うね)のブロッコリーが全部なくなりました。幸いなことに、そのままにしておいたら茎から脇芽がどんどん出てきて、小さなブロッコリーがたくさん収穫できました。4月には花が咲き、無事、種もとることができました。
 果たして今年はどうなることやら。しばらく様子を伺ってみたいと思います。

畑からは比良山地がよく見える。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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