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連載

エキゾチックな実 〜ホオノキ 

第88回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 アトリエの雑木林に涼しい風が吹いています。初秋に紅葉したヤマウルシは、早くも葉を落として冬支度を始めています。モズの声を聞きながら、午後の光を受けてやや黄ばんだ木々を逆光で眺めていると、秋本番がやって来たことを実感します。

10月の雑木林の風景。(撮影:今森元希)

 そんな頃、ホオノキの実が赤く色づきます。ホオノキは里山ならどこにでもある樹木で、大きな葉をつけるので遠くからでも存在感があります。雑木林の伐採地で切られたホオノキは、萌芽更新してすくすくと伸びてゆきます。荒れ地でも真っ先に生長するアカメガシワと同じく、パイオニアツリーなのでしょう。
 ホオノキは、コブシやタムシバなどと同じモクレンの仲間で、葉も枝も良い香りがします。私は葉の大きな植物が好きで、ホオノキには特にこだわってきました。広い葉は料理などにも重宝され、お皿に使ったり、ご飯を包んだり、いろいろと利用価値が高いのです。有用植物なので「オーレリアンの庭」でも3本育てていますし、「萌木(もえぎ)の国」には20メートルくらいの大木があります。

 ただ不思議なことに、野外で手頃なサイズの幼木を見つけることは困難です。アトリエの雑木林に植えたホオノキは、とても小さな幼木を鉢植えして、数年間育ててから地植えしたものです。

大きな葉を茂らせるホオノキ。(撮影:今森元希)

 また、ホオノキの花を間近に観察するのも意外に難しいものです。成長した木の高い所に花を咲かせるため、観察するチャンスはめったにありません。「オーレリアンの丘」の斜面には高さ10メートルくらいのホオノキがあり、ここでは、比較的低い所で観察できます。
 運良く実に接近できて手に持つことができた人は、その大きさに驚くことでしょう。姿はとてもエキゾチックで、オーストラリア原産の観葉植物のバンクシアの実のようでもありますし、ドラゴンフルーツのようなボリューム感もあります。

ホオノキの実はこんなに大きい。(撮影:今森元希)

 この実を1週間くらい放置しておくと、小さな亀裂がいっぱいできて、中から真紅の種が顔を出します。種はツヤツヤしていてトウモロコシの実のようでもあります。熱帯の植物にも、このような姿のものがあったような気がします。種はやがて殻から落ちるのですが、栽培する時はそれを土に埋めておくとホオノキが芽を出すというわけです。
 秋が終わりに近づくと、ホオノキの下には、焦げ茶色の実の殻がたくさん落ちています。種のほとんどは鳥たちが食べてしまいますが、このことによってホオノキの種は遠くに運ばれます。つまり鳥たちが、ホオノキの種の旅のお手伝いをしてくれているのです。

実から出てきた赤い種。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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