imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

ピンク色の可愛い花たち 〜ホトケノザとヒメオドリコソウ

第82回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 やっと春らしくなってきました。雑木林の木々も新芽がほころび、種類によっては若葉がどんどん広がっているものもあります。アトリエの庭では、モンシロチョウが飛び交い、こぼれ種で成長した菜の花でさかんに蜜を吸っています。

アトリエより少し小高い場所にある「オーレリアンの丘」の畑の春の風景。(撮影:今森元希)

 こんな頃、レンゲの花よりもひと足先にピンク色の可愛い花を咲かせる植物があります。それは、ホトケノザとヒメオドリコソウです。どちらも花が小さくて背丈が低いので、よく見ていないと見逃してしまうかもしれません。そして、あまりにもどこにでも咲いているので、農家の人たちにはただの雑草として扱われ、話題にならないことがほとんどです。
 しかし、かがみこんで花をじっくりと観察してみると、何とも愛らしい姿をしているではありませんか。ホトケノザとヒメオドリコソウは花がそっくり。飾りをつけたカップのような姿をしていてとてもきれいです。ただし、ホトケノザは茎の上の方に、立ち姿勢で花がついているのに対し、ヒメオドリコソウは葉っぱの間から横向きになって花が顔を出しています。そのせいかヒメオドリコソウの方がおしとやかで繊細なイメージがあります。

ホトケノザは、こんなに小さい花。(撮影:今森元希)

清楚な姿のヒメオドリコソウ。(撮影:今森元希)

 両者は同じシソ科の仲間ですが、もうひとつ忘れてはいけない種類があります。それはオドリコソウ。こちらはホトケノザやヒメオドリコソウに比べると大ぶりで、背丈は50センチくらいになり、花も大きくて大変魅力的な植物です。オドリコソウはかなり分布が広く、珍しい種類ではないのですが、見られる場所は意外に限られていて、フィールドでも毎年咲いている場所を確実に知っていないと花の姿を見ずに終わってしまいます。
 オドリコソウは、アトリエの「オーレリアンの庭」には自生していなかったので、ずいぶん前に移植したことがあります。翌年には花を咲かせたのですが、2、3年すると茎が細くなり、やがて消えてしまいました。土の湿度が足りないせいか、あるいは、酸性とアルカリ性のバランスの問題かもしれません。
 畑の土は酸性寄りですが、農家によっては畑に苦土石灰(くどせっかい)を常に施して土をアルカリ性にしている所もあります。ホトケノザとヒメオドリコソウはそんなことはお構いなしに精力旺盛で、本当に頼もしい植物です。
 オーレリアンの庭では、今、ホトケノザとヒメオドリコソウの花にヒゲナガハナバチやヒメウラナミジャノメがせっせと通っています。両者とも昆虫たちにご馳走を提供してくれる貴重な花たちなのです。

若葉が広がり始めたオーレリアンの庭の春。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。