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連載

茶目っ気たっぷりの愛嬌者 〜ジョウビタキ

第78回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 雑木林の葉がすっかり落ちました。落葉直後の林はセピア色の絨毯を敷き詰めたようで、空間が広々と感じられます。でもこの風景も束の間、年の暮れになると強い北風が落ち葉を運び去って一箇所にまとめてしまいます。

ナラガシワ、コナラなどが交じる林床。(撮影:今森元希)

 こんな頃、アトリエの庭には可愛い小鳥たちが毎日のように顔を見せています。その筆頭はジョウビタキ。おなかがオレンジ色で美しい鳥です。ヒタキの仲間は、オオルリ、ルリビタキ、キビタキなどたくさんの種類がいますが、どれもいかにも小鳥らしい姿をしていて私は大好きです。
 ヨーロッパの絵本などには庭に置かれたじょうろの上や窓際に止まっているコマドリの姿がよく描かれていますが、この鳥もジョウビタキの仲間です。コマドリは日本では山地の森林に住んでいますが、ヨーロッパでは人家の近くにやって来る好奇心旺盛でフレンドリーな鳥なのでしょう。ジョウビタキも庭が好きなので、まさに「里山のコマドリ」と言ってもよいかもしれません。

竹の棒に止まるジョウビタキ。(撮影:今森元希)

 ジョウビタキというとこんな思い出があります。私は子供の頃、滋賀県大津市内の町家造りの家で育ちました。長細い敷地の真ん中に坪庭があって、縁側越しにその風景を眺めたものです。石灯籠の横に大人の背丈ほどのアオキが2本植えてありました。1本は雄株、もう1本は雌株で、雌株には冬になると真紅の実がなりましたが、その実を楽しみにやって来る鳥がジョウビタキでした。アオキは常緑樹なので、身を隠すのにも都合がよかったのでしょう。
 くちばしの付け根に鋭いひげを生やした精悍(せいかん)なこの鳥は、私のことを警戒しながらも庭に降りてきました。アオキの葉の茂みの中にもぐると、実を一粒くわえるやいなや飛び去って屋根瓦のひさしに羽を休めました。その時のジョウビタキは、私が子供だったせいでしょうか、とても大きく見えました。
 アトリエに来るジョウビタキは、庭の畑の竹棒の先や稲木の天辺などによく止まります。どうやら見晴らしがよい場所が好きなようです。また、車のバックミラーの上にもよく止まります。自分の体が鏡に映り込むので、珍しいのでしょうか。ホバリングをしながら自分の姿を見ては、ミラーの上で一休み。それを何度も繰り返します。その様子は、遊んでいるようにしか見えません。ただし、困ったことが一つあります。それは、ミラーが糞だらけになって、常に掃除をせねばならないことです。
 今日もジョウビタキが窓辺にやって来ました。私の顔を見ているのかと思ったら、どうやらガラスに投影される自分の顔を眺めているようです。茶目っ気たっぷりの愛嬌者、それがジョウビタキなのです。

冬に元気になる菊を部屋に飾る。(撮影:今森元希)

まもなく冬がやってくる季節を楽しむ「光の田園」の歩こう会の様子。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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