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連載

親近感のある水鳥 〜ユリカモメ

第68回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 厳冬の季節がやってきました。近年は、年の暮れに雪が降ったと思えば年明けにしばらく暖かい日が続くこともあり、自然を相手に仕事をしている者にとっては予定が立ちにくくて困ってしまうことがあります。
 冬の間に気持ちよく晴れ渡る日がたまにありますが、そんな日はとても貴重です。私の場合は、棚田などの田園を散策したり、琵琶湖岸に出向いたりすることもしばしばです。
 琵琶湖ではいろいろな水鳥が見られますが、ユリカモメはとりわけ人懐っこくてかわいいので大好きです。冬のこの時期のユリカモメは純白の体で、翼や尾の先端が黒や灰色になっています。一番の特徴は、嘴と脚が美しい紅色をしていることです。この色彩のおかげで、ユリカモメにはとても暖かいイメージがあります。

琵琶湖岸に群れるユリカモメ。(撮影:今森元希)

 ユリカモメは全国的によく見られる水鳥で珍しくはありませんが、琵琶湖周辺には特に多いように思います。これはこの鳥の食生活の幅広さが影響しているのかもしれません。琵琶湖の浜辺にはかつては漁師が住んでいて、余った魚や採取した貝の殻を捨てたりしていました。つまり生ゴミ捨て場でもあったのです。ユリカモメたちにとってはどうやらそれらもご馳走のようです。湖北地方に行くと、今でも浜辺と人の生活は密接に関わっています。このような場所にユリカモメが多いのは、こうした人との関係が大いにあるように思います。
 こんなユリカモメに出会うのは簡単です。晴天で風のない日などは湖岸に群れています。岸辺に近い道路で車を走らせていると、ギャーギャーというしわがれ声が聞こえてくるので、このサインがあれば、必ずユリカモメと対面できます。

ユリカモメは、飛ぶ姿も美しい。(撮影:今森元希)

 ユリカモメというと、湖西地方にある水鳥センターのことを思い出します。以前、地元で学校の先生をされていたHさんが長年、ここの水鳥たちに餌付けをしてくれていました。昨今は餌付けという行為は生態系にとって必ずしもよいことではないとされて影を潜めてきましたが、30年以上前は野鳥の愛護のための活動としてよく行われていました。
 Hさんもかつてはほとんど毎日、パンくずなどの餌を琵琶湖に向かって投げ入れていました。オナガガモをはじめとするカモ類の大半は泳ぎながらやって来るのですが、ユリカモメの方は飛翔して集まります。Hさんの手にとまって直接エサをもらうこともありました。100羽以上のユリカモメが羽音や風を感じるほど間近にやって来るので、けっこう迫力がありました。
 この時、ユリカモメは人と共存できる鳥だと強く感じたのです。冬になると愛らしい姿に会いたくなるのは、そんな親近感からだと思います。

ユリカモメにゆっくりと接近する。(撮影:今森元希)

琵琶湖から眺める伊吹山。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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