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連載

晩秋に栄える赤い実 〜サルトリイバラ

第53回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 野山が色づく季節がやって来ました。遠くに見える比良山系(ひらさんけい)の頂(いただき)付近は、落葉して灰色になっていて、いよいよ紅葉が里に降りてきたという気持ちになります。

紅葉真っ盛りのアトリエ。(撮影:今森元希)

 木々の葉が色づきのピークに達すると、鮮やかさを増す実が目立ち始めます。秋に実がなる植物はたくさんありますが、その中でも、サルトリイバラは最も存在感のある実を付けるので私は大好きです。
 サルトリイバラは雑木林の林縁部などに自生する里山のつる植物です。低地から山地まで、それこそブッシュ(藪)や林があればどこででも見られます。私のアトリエの敷地内にもたくさん生えていますが、秋に実がなってくれるようにするには少し工夫が必要です。サルトリイバラは春に前年の茎から新芽が伸び、それが他の植物に絡まりながら成長していくのですが、夏場につるを刈ってしまうと実がなりにくくなるため注意しなければなりません。私の場合は、冬以外の季節は剪定をしない場所を決めていて、そのエリアに生えるサルトリイバラを大きくするようにしています。つまり、ちょっとしたブッシュを意識的につくっているということです。そこのサルトリイバラは夏までに3〜4メートルの高さになり、晩秋になると赤い実をいっぱい付けてくれます。

たくさん実を付けたサルトリイバラのつる。(撮影:今森元希)

 年によって異なりますが、実がたくさんなる年はつるを切ってくるくると輪をつくるとそのままリースになるほど豪華です。晩秋のサルトリイバラは、水が無くてもしおれずに日持ちするので、いろいろな飾りに使えます。枯れた葉を取り除き、つると実だけにして玄関のライトに這わせることもありますし、水を入れない花瓶に生けることもあります。また、実だけをとって小皿に入れておいても愛らしいデコレーションになります。とにかく紅色が長持ちするので、冬になってもそのまま楽しめるのがありがたいです。

サルトリイバラを部屋に飾る。(撮影:今森元希)

 ところで、この植物を大切にしている理由がもうひとつあります。それはサルトリイバラの葉が「ルリタテハ」という蝶の幼虫の食べ物になっているということです。ルリタテハは、黒みがかった紺色の地に、ややくすんだ日本画の顔料のような青色の帯模様をもった美しい蝶です。冬に成虫で越冬するキタテハ、アカタテハ、ヒオドシチョウと並んで、里山を代表するタテハチョウだと言ってよいでしょう。
 ルリタテハの幼虫は、サルトリイバラの葉の裏でアルファベットのC字スタイルで休んでいます。幼虫の体には鋭い棘(とげ)があり怖そうに見えますが、この棘に毒はありません。幼虫をそっと手に乗せるとほんのりチクリとしますが、まったく安全です。きっと棘は鳥に対しては威嚇になるのでしょう。
 さて、今年もサルトリイバラの赤い実は見られるでしょうか。アトリエだけでなく、オーレリアンの丘も散策したいと思っています。

ルリタテハはとても美しい。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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