imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

どこかエキゾチック 〜ウリハダカエデの紅葉

第41回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 涼しい風が田園を駆け抜け、広々とした刈田の風景がのどかさを醸し出します。一昔前は、この時期になると田んぼもあぜもすべてセピア色だったのですが、近年は秋でも気温が高めの日が多くなり、刈り取った後に稲の葉が伸び、中には二番穂を実らせるものもあるほどです。なので、午後の光で眺めると、晩秋なのに初夏の頃のようにも見えます。
 一方、雑木林には、やや季節がずれているものの順調に秋がやって来ます。特に11月は一年のフィナーレを飾る時期で、木々の葉の色が輝きます。こんな時、雑木林の中に入ってハンモックを吊るして寝そべるのはなかなか気持ちがよいものです。わずかな風が吹くと落ち葉がヒラヒラと舞ってきて顔をなでます。本を持っていても居眠りをしてしまうことがほとんどです。

晩秋の雑木林にハンモックを吊るして楽しみます。やっかいな蚊もいなくなり快適です。(撮影:今森元希)

 アトリエの雑木林はクヌギやコナラを植栽し、そのほかは鳥や風によって運ばれてくる種子から自然に木々が育つ環境を大切にしてきました。ただし、一つだけこだわって植えた木があります。それはウリハダカエデです。この木は私が足繁く通っていた雑木林にたくさん見られました。里山にもともと自生する植物なのにどこかエキゾチック。葉が大ぶりなので新緑が美しいのです。カエデの仲間はほかにウリカエデやヤマモミジなどがありますが、ウリハダカエデは葉の面積が大きいので迫力があります。
 この木が輝きを放つのはなんといっても晩秋で、橙色から黄色に見事に色づく葉に圧倒されます。私が琵琶湖の北部のとある雑木林に出会った時、ウリハダカエデの大木の下に真っ黄色の葉が絨毯(じゅうたん)のように落ちていました。その姿を見て一目惚れし、以来、ウリハダカエデを注意深く観察してきました。

色づく雑木林の中で、鮮やかな橙色の葉をつけるウリハダカエデ。

 アトリエのある琵琶湖の南部でも発見しましたが、ほんの少し山側を好んで自生していて、アトリエの周辺には見られませんでした。そこで、もう少し北部の高島市にある「萌木の国」という当時から私が管理していた雑木林から、発芽して1〜2年くらいのウリハダカエデの幼木を採取して、アトリエの雑木林に植えることにしました。ウリハダカエデは成長が早く、数年で私の背丈を超えて大きくなりました。どうやらこの場所を気に入ってくれたみたいで、毎年、種子をたくさん実らせ、敷地内に彼らの子どもたちが育っています。
 ウリハダカエデは日の当たり方によって黄色くなったり橙色になったりします。つまり、周辺の木々の茂り具合で紅葉が変わるのです。今ではアトリエの雑木林に欠かせない存在です。はたして今年はどんな色づきを見せてくれるでしょう。毎年11月になるとウリハダカエデのことで頭がいっぱいになります。

ウリハダカエデをはじめとする紅葉した葉をテーブルの上に集めてみました。(撮影:今森元希)

つる植物の紅葉も美しい。ヤマブドウの葉は、臙脂(えんじ)色になります。

*写真の複製・転写を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。