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連載

愛すべき野鳥たち

第19回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 厳寒の季節がやってきました。アトリエのある滋賀県大津市郊外は、瀬戸内気候に属しているので比較的温暖で、降雪はひと冬に数回程度です。滋賀県は盆地ですが、水温が安定した琵琶湖が真ん中にあるせいか、水道が凍結するようなことはありません。むしろ、隣接した京都の方が寒く感じられます。

アトリエの雑木林は、すっかり落葉した。

 冬と言えば野鳥の季節。アトリエでは、毎年、熟しきった柿を目当てに数々の鳥が集まってきます。剪定が終わった木の枝にジョウビタキやモズが休んでくれることもあり、心が和みます。コシアブラやヤマウルシの種子を食べるためにやってくる鳥や、群れを作って渡り飛ぶ鳥などの姿を眺めるのは楽しいものです。落葉した雑木林や庭は見晴らしが良いので、この時期は野鳥観察のベストシーズンです。

橙色の胸が美しいジョウビタキのオス。

 野鳥の思い出はたくさんあります。特に小学生の時。実は野鳥は、私にとって淡水魚や昆虫と並んで、熱烈に魅せられた生きものなのです。
 小学5年生の頃、近所に“鳥捕りのおじさん”がいました。“鳥捕り”と言っても食べるために鳥を捕獲するのではなく、生け捕りにして籠で飼い慣らし、鳴き声や姿を楽しむ、老後の趣味として堪能している人でした。当時はまだ野鳥の捕獲が許されていた時代で、小学生だった私はそのおじさんの後に付いていろいろなことを教わりました。自分では勝手におじさんの一番弟子だと思っていましたので、けっこう気合が入っていました。
 冬の野鳥は「地鳴き」という地味な鳴き方をします。春から初夏にかけての繁殖期に聞かれるさえずりとは似ても似つかない声です。例えば、ウグイスのさえずりは「ホーホケキョ」ですが、地鳴きになると「チェッチェッ」という声でトーンも随分下がります。野鳥を捕獲するコツは、この分かりにくい地鳴きを聞き分けることと、藪の中を低空飛行で行き来するコースを正確に見抜くことです。なので必然的に、時間があったら雑木林や竹林の中を歩き回り、観察に明け暮れることになります。おかげで、子どもながらに野鳥には精通している気分になりました。
 現在では使用が禁止されていますが、カスミ網や鳥もちを使って捕獲しました。捕獲した野鳥は竹籠に入れて安静にさせ、根気よく環境に慣らしてゆきます。その仕事はすごく繊細で、鳥捕りのおじさんから野鳥への愛情がひしひしと伝わってきました。
 今にしてみれば、野鳥を捕獲して無駄に殺生したようで申し訳なく思いますが、その反面、野鳥たちと濃厚なスキンシップを持てたことに感謝しています。ヤマガラにしろメジロにしろ、体温を感じながら抱きかかえた時、羽毛の精緻な美しさに心から感動したことを思い出します。
 あれから時は流れて、現代ではカメラが超高画質になったので、鳥を捕獲しなくても写真やテレビで観賞するだけで十分に臨場感が味わえる時代になりました。

雑木林の立ち枯れを好んでやってくるコゲラ。

木々の枝の整理は、冬の仕事だ。

*写真の複写・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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