第8回 赤星たみこさん(漫画家)
「漫画家さんには猫好きが多い」、そう思うのは“犬漫画”に比べて“猫漫画”が圧倒的に多いからでしょうか。猫が題材として優れているということでしょうか。赤星さんもそんな猫好き漫画家のお一人で、最近は楽にできるエコ家事や石けんに関する著書も多いようです。自称「ゴミ漫画家」のエコ生活とネコ生活を紹介します。
多い時には5匹の猫たちと同居
加藤 まずは赤星さんの猫遍歴を聞かせてください。
赤星 私が漫画家になりたての21歳くらいのころ、知り合いの漫画家さんが拾った猫を1匹、引き取ったのが最初です。三毛猫の「ギャザー」ちゃん。大家さんに「猫を飼わせてください」と泣き付いてOKをもらったんですが、次に引っ越した所がペット禁止。内緒で飼っていたら、そこの大家さんにものすごく怒られて、泣く泣く実家のある宮崎の知り合いに引き取ってもらいました。
加藤 その次の猫は?
赤星 しばらく間が空いて、この家を建てた1993年です。いずれは猫と暮らしたいけど、新居の柱でいきなり爪を研がれるのも悲しいので少し経ってから、なんて夫と話していたら、越してきて1カ月も経たないうちに、ネズミみたいに小さくて死にかけている子猫を2匹、庭で拾ってしまったのです。それが「コマ」ちゃんと「ヤク」ちゃん。コマは正式には小さい毬と書いて「小毬」なんですが、本当は「困りもの」になりそうだったので「コマリ」(笑)。
加藤 アハハハ。それじゃあ、ヤクちゃんは?
赤星 死にかけの厄介なものを引き取ってしまったかも、ということで「ヤク(厄)」(笑)。その翌年にもう1匹。生まれたての子猫がいるんだけど、もらい手がなければ処分するしかないと聞かされたら、もう引き取るしかないですよね。眉毛がバサバサしていて当時の村山首相に似ていたから「ムー」ちゃん。その後、97年の夏に近所のスーパーの駐車場で白とグレーのブチの猫を拾いました。それが「ふふみ」。ふふみがやって来たのは私が子宮がんの手術を受けた年で、5年後に再発の心配がなくなったころ、私の出張中に突然死してしまったんです。私の厄をふふみが全部持っていってくれたのかなとも思います。
加藤 そういうことはあるかもしれませんね。
赤星 そして、2004年に夫が拾ってきたのが、目がギョロギョロしている黒猫の「ギョロ」。06年には知り合いのジャパニーズボブテイルのブリーダーの所から、「そら吉」がやって来ました。ショーに出すにはしっぽが短すぎるというから我が家のペットに。だから、多い時には5匹いたんです。でも、12年にムーちゃんが17歳、ヤクちゃんが19歳で相次いで亡くなり、13年にはコマちゃんが20歳と3カ月で亡くなりました。で、その後やって来たのが、今年3歳になる「小町」。今はギョロとそら吉と小町の3匹です。

まさか自分がペットロスになるなんて
赤星 3年前に亡くなったコマちゃんは私にとって特別な存在だったので、いなくなった後はペットロスになりました。今でもこうして話をしていると涙が出てしまうんですよ。普段は忘れているけれど、猫の話をしてるといろいろ思い出しますね。
加藤 20歳なら十分天寿を全うしましたね。私は理不尽な死に方でなければ、喜んで送り出していいと思っています。
赤星 頭ではわかっているんですけどね。まさか自分がペットロスになるとは思いませんでした。立ち直るにはまた子猫と暮らすのがいいかと思って、里親サイトで、キジトラでしっぽが短い、コマちゃんそっくりの猫を探したんです。それが小町なんですが、私はコマちゃんと小町をつい比較してしまうんです。コマちゃんはこんなことしなかったのにって。
加藤 それ、小町ちゃんがかわいそうじゃないですか。赤星さんもコマちゃんを思い出してつらくなりませんか。
赤星 そうなんですよ。だから、似ている猫はよくないなあって思いました。
加藤 うちには子どものころから常に猫がいたんですけど、母の好みだったのか代々、黒トラか茶トラでした。だから、私は、前の猫と似ている猫がいたら、この猫の後ろに前の猫がいるという感覚になりました。今生きている猫と死んでしまった猫、2匹でセット。
赤星 そう思えばいいのか。でも、加藤さんのように子どものころから猫の死を身近に見つめてきた人と、私のように大人になってから猫を飼って死に直面した人では、たぶん心持ちが違いますよね。やっぱり50過ぎてから失う体験するのはキツイですよ。
加藤 それはあるかもしれませんね。子どものころからペットが身近にいれば耐性もできているというか。コマちゃんはどんな部分が特別だったのですか?
赤星 すごく私に懐いていたんです。私がいじわるなことをしても必ずそばにいるし、布団に入るとどこからともなく現れてスーッと入ってきて腕枕で寝るし、私がトイレに入ると付いてくるし、私のことを好きで好きでたまらないという感じが伝わってくるんです。
加藤 少し犬っぽいですね。
赤星 そうなんです。忠誠心を感じるんですよ。
加藤 赤星さんにとって伝説的な猫だったんですね。
赤星 レジェンドです。もう女神ですよって、言ってて恥ずかしくなっちゃうけど(笑)。コマちゃんとヤクちゃんが小さかったころ、週刊誌の連載を持っていて、毎週、アシスタントさんが3~4人やって来たから、ふたりとも人慣れしててお客さんが大好きだったんです。誰かが来るとスリスリして膝の上に乗るからみんなもにっこり、という感じです。
加藤 そういう時、飼い主としては嫉妬しません? みんなにいい顔してって。
赤星 それはないです。「かわいいですね」ってみんなが褒めてくれるから、「でしょ~」って自慢ですよ(笑)。
加藤 確かに。人見知りでお客さんが来ると隠れちゃって、「かわいいでしょ」って見せたいのに見せられないよりはいいですね。

赤星家の猫たちは美形ぞろい
加藤 小町ちゃんも、とってもかわいいじゃないですか。
赤星 でもコマちゃんはもっとかわいかった(笑)。
加藤 またそんなこと言って(笑)。さっきからずっとじゃれてるけど、若いからよく遊びますね。他のギョロちゃんとそら吉ちゃんはどこにいるんですか?
赤星 たぶん2階で寝てると思います。ちょっと連れてきましょうか。
(ギョロちゃん登場)
加藤 あらかわいい。あっ、このコ、パンツ猫だ! おなかの下の部分が逆三角形になってる。
赤星 パンツというかサイズからいうとスキャンティーかしら(笑)。
加藤 アハハハハ。
赤星 ギョロは夫に懐いていたんですが、コマちゃんが死んでから急に私にもべったり。抱っこしていると洋服をチュパチュパ吸って、びっしょりになるくらいなんですよ。
加藤 多頭飼育していると1匹いなくなると関係性が変わるんですよ。
赤星 うちではそれまでコマちゃんがトップの座に君臨してましたからね。
加藤 本当にチュパチュパしてますね。おっぱい飲んでるみたい(笑)。
赤星 そうなんです。元々チュパチュパする猫ではあったんですが、コマちゃんがいたころは遠慮してたのかなとも思います。
加藤 そういう時の猫の心理が気になります。やった! と思うのか、ごく自然に、今までできなかったことができるようになったと受け入れているだけなのか。
赤星 順番が来たと思ってるんじゃないでしょうかね。最初は、コマちゃんを失った私を慰めてくれているんだ、素晴らしいなと思っていたんですが、いや、これは順番で来てるだけじゃないかと。別に人間の心を斟酌(しんしゃく)してやってるわけじゃないんだと。
加藤 昔、うちで飼っていた猫が亡くなったので庭に埋めて、お皿にマグロを一切れお供えしていたんです。そこにその猫の息子猫がやって来てお墓の前でじっと佇んでいたので、母猫が亡くなったってことがわかるのか、さすがだなと思って少し目を離したら、マグロも息子猫もいなくなっていた。親の死を悼んだわけじゃなくて、食べたかっただけなのねって(笑)。
赤星 アハハハハ。
加藤 もう1匹のそら吉ちゃんは? 少し人見知りだそうなので、今日は出てきてくれないかしら。
赤星 呼びましょうか。うちはごはんの時に口笛を吹いて呼ぶんですよ(口笛の音に反応してそら吉ちゃん登場)。はい、このコがジャパニーズボブテイルのそら吉ちゃんです。ほら、しっぽがないでしょ。
加藤 わあ、ほんとだ。このコもきれいですね。赤星家の猫はみんな美形ですね。
赤星 みんな自慢の猫たちです。うちの猫たちは世界かわいい猫ランキングの1位から3位まで独占ですよ(笑)。まあ、コマちゃんは殿堂入りですけど。
加藤 はいはい(笑)。
