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連載

第2回 吉川美代子さん(フリーアナウンサー)

気がつけば22歳。また1カ月生きてくれてありがとう

吉川美代子(フリーアナウンサー)

加藤由子(動物ライター)

女性キャスターの先駆け的存在である吉川美代子さん。インテリジェンスにあふれる女性でありながら、どこか動物的な勘の鋭い人で、その鋭い勘で猫の健康を守り続けている。推定22歳のゲンちゃんは今日も元気にマイペースぶりを発揮していた。

寄る年波には勝てず。肉球にしわとしみが!

加藤 吉川さんちのゲンちゃんは、かなり高齢だと伺いましたが。
吉川 もともと野良猫で、去勢手術をするために動物病院に連れていったとき、すでに6歳くらいだと言われました。あれから15年以上経ったので、11月で推定22歳になりました。
加藤 22歳とはかなりのご長寿ですね! 出会いのきっかけは何でしたか。
吉川 とても人なつこくて「ニャー」という声がかわいらしい、近所でも知られた猫で、私が撫でたら思いきり甘えて体をすり寄せてきたのです。そのうち私の帰りを待ちわびるようになったので部屋に連れていき、夜は一緒に過ごして明け方になるとまたどこかへ出かけていくという暮らしが始まりました。私が留守のときでも部屋の出入りができるように、マンションの部屋の明かり取りの窓に猫専用出入り口を付けて、室内と外を自由に行き来させていましたが、10年ほど前に後ろ脚の付け根を竹串で刺されるというけがをしたんです。人に対する警戒心がないので誰かにやられたのかもしれません。これはゲンのためにも完全室内飼育にしなければと思って、今のマンションに引っ越しました。
加藤 そうだったんですか。引っ越しは正解でしたね。そうでなければ、外暮らしが長いから完全に室内飼育に切り替えるのは難しかったかもしれません。
吉川 はい。同じ場所だったら無理だったと思います。以前のマンションの近くには保護樹林があったので、ゲンはいろいろな獲物を捕まえて部屋の中に持ち帰ってきました。スズメやハトをはじめ、キジのような大きな鳥をくわえてきたこともあるんです。大好きな狩りもできなくなり、しばらくは外に出たがって鳴いていましたが、3カ月くらいであきらめたみたいです。
加藤 キジですか。かなりの大物ですね。
吉川 昔はゲンも大きくて、体重が6キロもある近所のボス猫だったんです。今では3キロくらいになってしまいましたが。
加藤 ゲンちゃんは頭骨が大きいので、体が大きかったというのがよくわかります。
吉川 肉球も弾力がなくなって、しわしわになってきました。しみも出てきたんですよ、肉球に! 4~5年前にしみを見つけたときには、あ、人間と同じだと思って笑っちゃいました。それから、声も少しおじいさんっぽくなりました。でも、私が帰ってくると、かわいい声で「ニャー」と鳴きながら出迎えてくれます。
加藤 それは元気ですよ。うちにも17歳になる猫がいますが、もう耳があまり聞こえていないから、私が帰ってきても寝たままで起きてきません。
吉川 年を取ってくるといろいろなけがや病気もあります。何年か前には観葉植物によじ登ろうとして左目の角膜を傷つけたし、今は甲状腺機能亢進症と心臓肥大で薬を飲んでいます。
加藤 でも、コントロールできているんですよね。
吉川 そうですね。獣医さんとは15年来のつき合いで、何でも相談できる心強い存在です。ゲンを見ていて「あれ?」っていう違和感が少しでもあれば、すぐに動物病院に連れていきます。いつもとことこ歩いてくるのにちょっとうずくまったので病院に行ったら変形性脊椎症が見つかったり、カリカリ(ドライフード)を食べているときに一瞬、あれ変だなと思って連れていったら、歯肉と歯の間に骨が刺さっていたり。
加藤 気づきが早いですね。その観察力はすばらしい能力の一つだと思いますよ。
吉川 毛づくろいをしていて舐め方がおかしいとか、なぜかピンとくるんです。だから、早期発見早期治療で重症にならずに済んでいます。
加藤 吉川さんが動物園の飼育員になったら、とても優秀な飼育員になれると思います!

自分の人生で最後の猫になる!?

加藤 子どもの頃から猫を飼っていたのですか?
吉川 はい。両親が動物好きでしたから、野良猫や野良犬を拾ってきては飼っていました。そうすると、ここの家なら飼ってくれるだろうと、子猫や子犬を私の家の庭に置いていかれてしまい、常に犬や猫が3~4匹いましたね。
加藤 その頃って犬や猫たちはどのくらい生きていましたか?
吉川 5~6年だったと思います。猫は放し飼いでしたから、いつの間にかいなくなってしまうのもいましたし。
加藤 そうですよね。ほんの20年くらい前までは、犬猫の寿命は3~5年でした。感染症にかかって死んでしまうことが多かったけれど、今は本当に寿命が延びました。
吉川 自分の年齢を考えると、ゲンがいなくなった後はもう猫は飼えないのではないかと思うことがあります。老老介護になりそうだし。だから、ゲンが最後の猫になるかもしれません。
加藤 その気持ち、よくわかります。うちには17歳と9歳の猫がいますが、私もこれで最後かと思っているんです。でも、私に何かあったら猫を引き取るから大丈夫だと言ってくれる人もいるので、年の離れた猫仲間とそういう約束をしておけば、かなり気分は楽になります。
吉川 実は4~5年前に、ゲンの他にもう1匹飼おうかと思って、子猫を引き取ろうとしたことがあるんです。2匹のほうがゲンも寂しくないかと思ったのですが、ゲンが怒って子猫に咬みついて、子猫もおびえてクーラーの裏から出てこなくなってしまったので、双方のことを考えて4日で子猫を保護されていた動物病院にお返ししました。獣医さんからは、「ゲンちゃんは吉川さんとあまりにも関係が密だから、他の人や猫が入る余地がない」と言われました。
加藤 甘えん坊で人間と密に絆を結ぶのはオスに多いですね。うちは2匹共メスなので、私に対して「私は私、あんたはあんた。いいのよこれで」って感じでクールなもんです。
吉川 ゲンがいなくなってしまった後にもし引き取るとしたら、私が看取ることができる高齢の猫かなと思っています。
加藤 同感です。うちの2匹を見送れば、私もいつ死んでもいいと気が楽になると思う一方で、猫のいない生活に物足りなさを感じると思います。私も年齢のいった猫なら引き取れるかもと思っているのですが、東京都の動物愛護センターは60歳を過ぎたらもう犬猫は譲ってくれませんよ。この条件を知ったとき、年を取ったことを否定されたような寂しい気分になりました。
吉川 ドキッ。私も東京都からはもうダメですね。猫を引き取るときは動物病院に相談します。

作られた猫ブームは猫にとってはいい迷惑

著者情報

フリーアナウンサー

吉川美代子

よしかわ みよこ

1954年生まれ。77年TBSに入社。以後37年間、アナウンサー、キャスターとして活躍。TBSアナウンススクールの校長も12年間務めた。2014年に定年退職。現在はキャスターだけでなく、コメンテーターとしても幅広いジャンルで活躍している。著書に『ラッコのいる海』(立風書房)、『アナウンサーが教える 愛される話し方』(朝日新書)、『結婚式・二次会 女性のスピーチ』(日本文芸社)ほか。(2015.12)

動物ライター

加藤由子

かとう よしこ

動物ライター、エッセイスト。「ヒトと動物の関係学会」監事。1949年生まれ。日本女子大学卒。大学では生物学(動物行動学)を専攻。移動動物園などを経てフリーライターになる。動物、特にネコの生態や行動学に精通し、ネコに関する書籍などを多数執筆している。ネコ関連の著書に、『雨の日のネコはとことん眠い』『ぬき足、さし足、にゃんこ足』(共にPHP研究所)、『ネコを長生きさせる50の秘訣』(サイエンス・アイ新書)、『猫の気持ちを聞いてごらん』(幻冬舎文庫)、『猫式生活のすゝめ』(誠文堂新光社)、『猫とさいごの日まで幸せにくらす本』(大泉書店)、『猫の気持ちは見た目で9割わかる!』(大和書房)ほか多数。

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