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連載

どうなってんの?! 日本のセクハラ社会

雨宮処凛(作家、活動家)

アデイト(タレント、アーティスト)

(構成・文/本間公子)

 今回の「生きづらい女子たちへ」は、新著『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)の発売を記念したスペシャル企画。この国で女性たちを悩ませてきた「パワハラ」「セクハラ」問題や、今話題の「#MeToo」について、著者の雨宮処凛がフランス人女優のアデイトさんと語り合いました。日本でタレント活動をする中で何度も危ない目に遭い、「日本の男性はおかしい」と語る彼女の訴えとは? そしてフランスと日本の女性観の違いとは?

日本で受けたセクハラの数々

雨宮 アデイトさんは、日本の#MeTooの動きがどうなっているか知りたいそうですが、日本で何か嫌な思いをされたんですね。まずはその話から聞かせてください。

アデイト 私は8歳からタレント活動を始めて、22歳の時に音楽の仕事をするため日本へ来たのですが、ほどなくして日本人の友達から「知り合いのプロデューサーを紹介できるけど、そのプロデューサーの彼女にされちゃうかもよ」と言われたんです。

雨宮 仕事をもらう代わりに、プロデューサーと体の関係を持たなくちゃいけないってことですか?

アデイト そうなんです。これはすごくショックな話で、すぐにお断りしました。私はキリスト教徒で、しかも親のしつけが厳しく、「結婚するまではバージンじゃないとダメ」と言われて育ったんです。だから、セックスを利用してキャリアを上げることは最低・最悪なことだと思っていました。なのに、日本に来てすぐにそんな出来事があって……。その後も同じようなことを何度も経験しました。

雨宮 他にもセクハラを受けたことがあるんですね。

アデイト はい。私、音楽と一緒に服のデザインの仕事も始めたのですが、とある会社の社長さんが私のデザインした服を気に入ってくれて、いろんな作品を見せるうちに、富士山の近くにある社長さんの別荘に誘われたんです。私は仕事の打ち合わせだと思ってその別荘に行ったんですが、彼がいきなり私を壁に押しつけて、キスしようとしてきました。しかも「あなたが好き」とか「あなたと付き合いたい」とか、そういう言葉は一切なく。だから私、逃げたんです。

雨宮 富士山の近くの別荘から?

アデイト そう。夜遅い時間だったけど、その社長さんと同じ屋根の下で一晩過ごすのは絶対にイヤだったので、何時間もかけて御殿場駅まで歩きました。確か25kmぐらいあったと思います。車しか通らない長いトンネルを何本もくぐって、駅に着いたのは朝の4時。それから道端に座って始発を待ちました。駅にはホームレスの人たちがいたけど、彼らといるほうが安心に感じたんです。

雨宮 仕事を求める若い女性をターゲットにするんですね。ひどすぎる話ですが、日本の女性もよくそんなセクハラを受けます。

アデイト こんなこともありました。ある男性デザイナーと、打ち合わせのあとで他のスタッフと一緒にレストランへ食事に行ったんです。そうしたら、隣に座ったそのデザイナーが私の脚を触り始めて……。私、すごく恥ずかしかった。で、いやらしい目をしながら顔を近づけてきて「君の夢を見た」とか言ってきたので、急いで席を立ちました。

雨宮 うわー、気持ち悪い(笑)。

アデイト 私は、「ルイ・ヴィトンのバッグを買って」とかではなく、「あなたの下で働きたい」「自分はこういうスキルがあるので仕事で貢献したい」という気持ちで接しているんです。でも、私を使う側の人たちは、その地位や立場を利用してひどいことをしてくる。

雨宮 アデイトさんの母国フランスでも「仕事がしたいなら体を差し出せ」みたいな感じのセクハラはあるんですか?

アデイト フランスでも同じようにあると思います。男性は、チャンスさえあればセックスしたい生き物だから。ただ、私のようにキリスト教徒であれば、結婚している人はパートナー以外の人に手を出してはいけないというルールがあります。法律も厳しくて、フランスやドイツでは、セクハラ裁判は証拠がなくても重罪になるんです。一方、日本には何のルールもないし規制もゆるいので、そういうことが起こりやすいのかもしれないですね。私も何度か日本で裁判を起こしましたが、証拠がないという理由で負けてしまいました。

雨宮 日本に来るまで、セクハラが頻繁に起こっている国だとは知らなかった?

アデイト 想像もしていませんでした。だって、日本は世界で一番文明的な国だと思っていたから。

雨宮 例えばアダルトビデオだとか、日本の性風俗に異常にいろんなバリエーションがあるとか、そういうことも知られていないんですか?

アデイト 友達から少しは聞いていましたが、私、子どもの頃から日本が大好きで、日本のいいところしか見てこなかったんです。旅行で初めて日本に来た時も、会う人みんな親切でやさしかったし……。だから余計に、変態な行為やセクハラの多さにショックを受けたんだと思います。

雨宮 なるほど。

アデイト 風俗店やホステスクラブとか、なんでわざわざお金を払ってまで奥さんや彼女以外の女性とコミュニケーションをとりたがるのかもすごく不思議です。

雨宮 そうそう。そのお金と時間を家族や彼女に使えばいいのにね。フランスやドイツには、ホステスがいるクラブみたいなお店はないんですか?

アデイト ないですね。風俗店はありますが、私のイメージでは、彼女をつくれない男性やおじいちゃんがお金を払ってセックスするところという感じ。一般的には、セックスは恋愛感情で結ばれた男女がするもので、子どもの頃からそういうことをきちんと教育されるんです。

雨宮 フランスやドイツでは、学校や家庭でどんな性教育が行われているんですか?

アデイト まずは、本や映画の素敵なラブシーンから愛を学びます。

雨宮 いいなあ。児童ポルノや変態的な漫画じゃないのね(笑)。

アデイト あと私が知る限りでは、お母さんとお父さんがずっとラブラブなんです。日本みたいに、お父さんが残業や飲み会で夜遅く帰宅するんじゃなくて、18時前には仕事を終えてすぐ家に帰る。そして家族みんなで晩ご飯を作ったり、子どもの宿題を手伝ったりします。

雨宮 お父さんも一緒にご飯を作るんだ。いや、すごいな。

アデイト ヨーロッパでは家族を一番大切にするんです。もちろん仕事も大事だけど、日本のように人生のすべてじゃない。子どもたちはそういう両親の姿を見て、愛や女性へのリスペクトを学ぶんだと思います。フランスは離婚率が高いけど、原因の大半は経済的困難で、両親の離婚で子どもが犠牲にならないよう社会制度が整っています。だから男性も女性も愛が冷めたら、次のパートナーを探してまた温かい家庭を作り直します。

ニッポンは痴漢大国なの?!

アデイト 日本の男性って、女性を年齢で差別することも多いですよね。若ければ若いほどいいという感じ。アイドルグループのAKB48なんかが、まさにその典型。

雨宮 そういう風潮も日本独特ですよね。

アデイト ヨーロッパだと頭がいい/スマート=セクシー=魅力的な女性、となります。

雨宮 「あたし、わかんなーい」みたいなのは、まったく魅力にはならないですよね。でも、日本の場合は若くて無知な女性がもてはやされる。

アデイト そう、可愛いバカがね(笑)。きっと男性自身が弱いから、そんな自分でも意のままにできる女性を求めるんです。そうすることで、ようやく自分が男らしくなったように感じる。

雨宮 なんでそうなっちゃうんだろう……。

アデイト 日本では、家庭で愛が育っていないのかな。

雨宮 そうかもしれないですね。一昔前の日本のお父さんって、もちろん全員ではないけど、奥さんを奴隷のようにしか思ってなくて、家事を全部やらせて子育ても任せっきりで、気に入らないことがあったら殴って……。そういう家庭で育った子どもは、女性をリスペクトする気持ちにはなれないと思う。

アデイト ヨーロッパでは親が子どもにキスしたりハグしたりするのが普通だけど、日本にはそういう習慣がないでしょう。だから、アダルトビデオで見た過激なキスやハグのシーンを、小さな子どもに平気でやっちゃったりするのかも。

雨宮 あと日本には、電車内での痴漢行為ってあるじゃないですか。フランスには痴漢っていないんですよね?

アデイト いないですね。日本みたいな満員電車もないけれど。そうでなくても、痴漢行為なんかしたら周りの人たちからぶっ飛ばされちゃう。

雨宮 日本に来てびっくりしませんでした? 痴漢がたくさんいて。

アデイト 私は新宿に住んでいたので埼京線をよく利用していたんですが、とにかく痴漢が多かった。

雨宮 ああ、埼京線は多いと聞いたことがあります。

アデイト 最初に痴漢に遭った時は、何が起こったのか訳がわかりませんでした。されたことを人に話すのも恥ずかしくて、痴漢に遭わないよういろいろ対策を考えました。例えば、二度と同じ車両には乗らないとか、なるべく壁を後ろにして立って前は荷物でガードするとか。

雨宮 うんうん。

アデイト でもね、知り合いの日本人男性に痴漢された時の話をしても、「まあ、触られるだけいいんじゃない?」みたいな言い方をするんです。#MeTooの話題を振った時も同じで、「あれは男性に相手にされない女性が、MeToo!MeToo!って騒ぎ立てているだけなんだ」って言って、ちっとも真剣にとりあってくれません。

雨宮 それはひどいなあ。

アデイト 例えば、会社に大切なお客さんが来たら、丁寧な態度や言葉で対応しますよね。奥さんや子どもにもそれと同じように接すればいいのにと思うんだけど、会社でスマートに振る舞っていると家に帰って来て疲れちゃって、家族に対してはできないっていう(笑)。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

タレント、アーティスト

アデイト

あでいと

1976年、フランスのストラスブール生まれ。8歳で演技を始め、98年に日本に移住してテレビ番組や映画に出演。2008年のX JAPAN 東京ドームコンサートではDJを担当、12年にはリドリー・スコットがプロデュースした映画作品『JAPAN IN A DAY』で撮影監督をつとめるなど、歌手、女優、ディレクター、カメラマン、大学教授、ファッションデザイナーなどとしてマルチに活動している。

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