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常識を疑え!

女性政治家は、なぜ腹がすわって見えるのか?

香山リカ(医師)

 沖縄県の米軍普天間基地移設問題で政府方針への署名を拒否し、大臣を罷免された福島瑞穂社会民主党党首。「私を切り捨てることは、沖縄を切り捨てること」ときっぱりと語った福島党首には、「筋を通して立派だ」と評価する声も高いようだ。ちょうどその夜、「朝まで生テレビ」に出たのだが、視聴者から「福島党首へ言いたいこと」を募集したところ、圧倒的に肯定的な評価が多かった。

 そういえば、福島党首は女性だが、「仕分け」で注目される民主党の蓮舫議員も女性。自由民主党から離党して新党を結成したのは全員、男性議員で、田原総一朗氏も先の番組に出演した小池百合子議員に「どうして男ばかり離党するの?」と尋ねていた。偶然なのかもしれないが、このところ「腰をすえて政治に取り組んでいる」と評価されるのは、なぜかみな女性議員だ。

 政治がぐらついている、と言われるいま、なぜ女性政治家たちはしっかりと自分の道を進むことができるのか。

 理由はいろいろあると思うが、危機的な事態になればなるほど、実は“少数派”にいる人たちのほうが落ち着いて力を発揮できるものなのかもしれない。政治の世界でのいちばんの多数派は、「与党の男性」だ。ただ、自民党は野党にはなったが、与党時代があまりにも長く続いたため、いまだに“政権政党”の気分でいる男性議員も多い、と聞いたことがある。そういう人たちの中には、マスコミや支援者がこれまで通りの扱いをしてくれないことに耐えられず、不機嫌になったり離党を口走ったりする人も少なくないのだそうだ。

 それに比べて、女性たちは政治の世界では最初から少数派。まして、それが野党となれば、さらに立場が弱くなる。民主党はいまは与党だが、とくに女性議員たちは、これまでと変わらずに、自分がやるべきことに堅実に取り組んでいるのではないだろうか。「与党になったからこれで権力者だ」と思うほど単純では、女性は政治の世界ではとても生き残れない。

 このように、激動の時代であればあるほど、「結局、信じられるのは自分。どんなときも自分がやれることをやるしかない」と十分、わかっている少数派のほうが、結局、腹をすえて仕事に取り組んでいけることになる。「ピンチはチャンスだ」などと言ってヘタな画策をすることもない。だから、大きく足元をすくわれることとも無縁だ。

 混迷のときこそ、力を発揮する女性たち。とはいえ、衆議院の女性議員の割合は11.3%、増えつつあるとはいえ、列国議会同盟(IPU)による国際比較で世界98位。主要国ではもっとも低く、アジアだけで見ても中国、北朝鮮、韓国に及ばない。もちろん、いまだに女性首相は誕生していない。

 個人的には女性の政治家の活躍におおいに期待したいのだが、もし女性が政治の世界で少数派でなくなったら、「まわりに振り回されない、わが道を行く」といういまの良さも失われて「なんだ、結局はオトコと同じじゃないか」ということになってしまうのだろうか。

 男性と女性の心理の違いは、本質的なものなのか、それとも社会や文化によって形作られたものなのか。この議論は、生物学や精神分析学の世界でもいまだに続いており、決着はついていない。ただ万が一、その違いが本質的なものではなく、多数派になればオトコもオンナも同じように弱さ、もろさが出てくるのだとしても、いまの政治の世界に「この人に」と国を託したくなるような男性政治家がいない以上、女性リーダー待望論はこれからますます高まっていくはずだ。G8サミットでドイツのメルケル首相らと日本人女性首相が並ぶ日は、いつ頃やって来るのだろう。それは意外に早いかもしれない。

著者情報

医師

香山リカ

かやま りか

1960年北海道生まれ。東京医科大学卒業。学生時代より雑誌等に寄稿。その後、精神科医として臨床に携わりながら、一般読者向けの著作活動を行う。著書に『女は男のどこを見抜くべきか』(集英社)、『執着 生きづらさの正体』(集英社クリエイティブ)、『「いじめ」や「差別」をなくすためにできること』(ちくまプリマー新書)、『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました』(集英社クリエイティブ)など多数。

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