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経済万華鏡

政策の両手の動きを監視しよう

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 ついに消費税10%体制が始まりましたね。軽減税率が正確に適用されているか。「キャッシュレスなら5%のポイント還元」などがしっかり行われているか。これらのことをメディアが盛んに追跡しています。

 いずれも、確かに重要なことではあります。口先ばかりの負担軽減措置では看板に偽りですからね。ただ、考えてみれば負担軽減の度合いばかりが取り沙汰されるのもおかしな話です。なぜなら、そもそも消費税増税は超火の車状態の財政を立て直すために、少しでも税収を増やそうということで行われるはずです。それなら、なるべく歩留まりよく、取りっぱぐれがないように増税分をちょうだいするよう、租税当局は注力して然るべきところでしょう。それなのに、あれやこれやとおまけしてみたり、キャッシュバックをしてみたり、というのは、いかにも奇妙な対応です。
 食料品への税率の8%据え置きが悪いとは言いません。ですが、右手で増税しておきながら、左手でその事実を必死で打ち消そうとするような政策姿勢には、どうも極めて不誠実なものを感じてしまうのです。なぜ、こういうことになるのか。それは、そもそも、今回の増税の動機そのものが実は不純なものだからなのではないか。そう勘繰りたくなります。

 日本の財政をしっかり立て直したい。大量に国債を発行し、それを大量に中央銀行に買ってもらう。こんなことは早くやめたい。いざという時に、台所事情のことをあれこれ心配しないで迅速に国民のためにお役に立てるようになりたい。そうした真摯(しんし)な思いで増税策を行うのであれば、やたらに「キャッシュレスでポイント還元」などという煙幕をはったりせず、増税分をしっかりその価値をかみしめながら押し頂くはずでしょう。せっかくちょうだい出来るようなものを姑息な手段で「還元」するなどということは考えないはずです。
 ところが、実のところは心底財政再建に励みたいわけではない。突如として思いついた教育の無償化やら、軍備増強にカネを回したい。そういう下心があると、それを隠したいから目くらましに走る。どうも、こうした心理と行動パターンが感知されてしかたがありません。

 右手で増税、左手で還元。右手で国債大売り出し、左手で国債まとめ買い。今の政策責任者たちは、右手と左手のコラボがよこしま過ぎるように思います。時には、悪さをしたがる右手を左手がピシャリとたたいて行いを改めさせる。政策というものは、それくらいの緊張感で執り行うべきものでしょう。我々、国民が管理人となって、しっかり、政策の両手の動きを監視して参りましょう。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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