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経済万華鏡

オリンピアンになりたい

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 冬季五輪の熱戦が続いていますね。夏も冬も、オリンピックシーズンが到来すると、必ず頭に浮かんでくるのが「オリンピアン」という言葉です。元来、「古代オリンピアの住人たち」、あるいは「古代オリンピア的な」などの意ですが、「オリンピック選手」の意味で使われるようにもなっています。

 

 ですが、この「オリンピアン」には、少し別の意味もあります。「威風堂々」とか「泰然自若」、あるいは「余裕綽々」などです。
 ギリシャ神話に登場する「オリュンポスの神々」のイメージに由来しているのでしょう。神様たちのように堂々としていて、余裕があって、落ち着いている。そういうわけです。スケールの大きさの表現としても使われます。

 

 近頃の日本は、どうも、あまりオリンピアンじゃない。そんな風に思われませんか? 誰もが、何やらいつも追い詰められていて、アクセクしていて、切羽詰まっている。だから、いろんな問題が起きる。
 大雪が降って列車が立ち往生すると、すぐそこに駅があるのに、乗客を延々と車両の中に閉じ込めてしまう。マイクロバスを出そうかと言われても、パニックして断ってしまう。新幹線に台車亀裂発覚問題が出れば、対策を検討する電話コミュニケーションが肝心なところで破綻して、つたない対応をしてしまう。目先の数字合わせに追われて、企業が不正行為を重ねてしまう。大学が入試問題作成でミスを犯し、しかも、それをなかなか認めない、などなどなど……。

 

 みんな、落ち着きを失っている。冷静な対処が出来なくなっている。悠々とすることを忘れている。そのように感じること、しばしばです。
 タクシーに乗っても、何やら、運転手さんたちがコチコチに緊張している。乗り込んだ途端に、「車内の温度はいかがですか?」と詰め寄ってくる。乗ったばかりの乗客に、にわかには返事し難いことに返答を迫る。まるで、目に見えぬ審査員に合否判定をされているようにみえる。ひょっとして、AIに行動チェックをされてるのかな?
 プレミアムフライデーだから、早く仕事を片付けて(片付けたふりをして)会社を出なくっちゃ。飲みに行かなきゃ。美術館に行かなきゃ。リラックスしなきゃ。せかせかせかと、追い立てられていく我ら。

 

 悠然たるオリンピアンモードから、我らをどんどん遠ざける力学が、どうも、今の日本に充満しているように思います。だからといって、田舎に移住して「我足るを知る」のスローライフに引きこもればいいのか。そうではないとも思います。それは、一種の現実逃避でしょう。現実逃避も時には大いに楽しいですが、逃げっぱなしは、これまた、あまりオリンピアンではないと思います。
 アクセク、せかせかを強要する窮屈ライフ。それをもたらしているのは何なのか。その圧力をどうはねのけるのか。オリンピアンな落ち着きをもって、これらのことをご一緒に考えていければと思います。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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