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経済万華鏡

終わりが近いか、新興諸国の借り物ふんどし人生

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 新興諸国の経済的雲行きが危うくなっているようです。

 新興諸国といえば、その勢いはとどまることを知らず。そう思われてきました。中国やブラジルやインドがすぐ頭に浮かびます。最近では、インドネシアやトルコや南アフリカも、新興勢の一員として、グローバル経済の希望の星と目されるようになりました。その彼らの先行きが、ここに来て危うくなっているというのです。なぜでしょう。
 実をいえば、答えは簡単です。
 端的にいって、彼らは、この間、ずっと人のふんどしで相撲を取ってきました。借り物ふんどしの主成分は、カネでした。デフレの先進諸国から、大量にカネが流れ込んでくる。カネという名のこのふんどしの力を借りて、新興諸国は、実力以上の相撲を取ってきた。そういうわけです。

 それを可能にしてきたのが、いわゆる「キャリートレード」です。すなわち、低金利国で借りたカネを高金利国に投資して、利ザヤを稼ぐ取引です。
「キャリー」は「持ち運ぶ」の意です。ある金融資産を持ち運ぶことで、投資家はどれだけの収益、すなわちお土産を手に入れられるのか。どれだけのコスト、すなわちお荷物を背負うことになるのか。そこを天秤に掛けて行う取引だから、「キャリートレード」と呼ぶのです。
 ゼロ金利の先進国で資金を調達すれば、キャリーしなければいけないお荷物はゼロです。その資金を高金利の新興国に運べば、ステキなお土産を手に入れることができるわけです。しかも、お荷物無しなのですから、輝くお土産は全く無傷で丸ごと我が物になるわけです。

 こういうカラクリですから、先進国から新興国へと流れるキャリートレードは、すっかり隆盛を極めることになりました。特に、量的緩和を大規模に展開するアメリカから、大量の資金が新興諸国に運び込まれたのです。ところが、ここにきて、アメリカの量的緩和は出口に向かおうとしています。つまり、持ち運ばなくてはならないお荷物が、増えようとしているわけです。
 そうなってくると、キャリートレーダーたちは心配になります。お荷物の方が、お土産より重くなったらどうしよう。そうなっては大変だ。そうならないうちに、早くお運び取引は手じまいに入った方が良さそうだ。彼らは、今、そう考え始めているでしょう。
 全ての投資家が手じまいの決意を固めてしまったら大変です。その時、借りたふんどし頼みの新興諸国にとっては、まさに万事休すの場面が到来することになります。

 借りたふんどしを奪い返されて、一糸まとわぬ姿となった時、新興諸国はどうするでしょう。目が離せません。
 もっとも、赤裸を凝視するのは、少々つらくはありますが。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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