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一語千金

リバースモーゲージ

[reverse mortgage]
持ち家を質に入れる

玉手義朗(エコノミスト)

「質屋」は古くからあるお金を借りる方法の一つだ。時計や宝石といった「質草」を担保として入れてお金を借り、期限が来たら元金に利息を加えたお金を返済して取り戻す。返済不能の場合には、「質草」を手放す「質流れ」にすることで返済義務が消滅するため、面倒がない。「質流れ」を前提にした「事実上の売却」になっていることも多いが、取り戻す可能性が残されることから、「形見の時計」などの思い出の品でも質に入れやすい。
「リバースモーゲージ」は、質屋のシステムを「持ち家」に適用した融資制度で、持ち家に住み続けながら家を現金化できる点が特徴だ。リバースモーゲージの利用者は「持ち家」を担保(質草)として金融機関からお金を借りる。返済期限は「利用者が死亡した時」だ。一方、金融機関は、利用者が死亡するまで融資を継続するが、「空き家」になった段階で担保となっていた住宅を売却すれば融資したお金を回収できる。老後資金に不安があるからといって、持ち家を生前に売却してしまえば住む所が無くなってしまう。しかし、リバースモーゲージを利用すれば、売却代金を生前に受け取れるうえに、死ぬまで思い出深い自分の家に住み続けられるというわけだ。
 リバースモーゲージの融資の受け取り方には、大きく分けて「年金型」と「一括型」の2種類がある。「年金型」は持ち家の査定額が1000万円の場合、「100カ月間、毎月10万円ずつ受け取る」など、年金のように分割でお金を受け取るというもの。通常の住宅ローン(モーゲージローン)では、支払いが進むにつれて借金残高が減少して不動産が自分のものになる。一方、リバースモーゲージは、時間が経つにつれて借金の金額が増えて、最後に不動産の所有権が消滅するという住宅ローンとは逆のプロセス(リバース)をたどるため、この名前がついたのだろう。
「一括型」は査定額が1000万円なら、その金額を一度に受け取ってしまう。そのお金で、豪華な海外旅行など残りの人生を楽しむために使うことができるわけだ。これ以外にも、お金が必要になった時だけ融資を受けて借入期間中の利息だけを支払うものなど、リバースモーゲージには、金融機関ごとに様々な種類が提供されている。
 様々なメリットがある一方で、リバースモーゲージにはデメリットもある。返済期限がいつになるか分からないため金融機関のリスクが大きく、査定額が低くなることが多い。また、評価されるのは「土地」のみで、「建物」は劣化が進むことからほとんど評価されないため、マンションへの適用は難しいか、査定額が極端に低くなってしまうのだ。
 リバースモーゲージは、老後の生活設計の幅を広げる融資システムだが、日本ではなかなか広がっていない。「死ぬまで住み続けられる」と言われても、自宅を生前に売ることに対する抵抗感が拭いきれない人が多いようだ。しかし、リバースモーゲージを活用すれば、持ち主の死後に住宅が放置される「空き家問題」を減らすことも可能なため、地方自治体が導入しているケースもあるなど、今後の拡大が期待されている。
 リバースモーゲージは、提供している金融機関によって千差万別であり、利用する際には十分な吟味が必要だ。しかし、「一生の買い物」として手に入れた持ち家を、自分自身で使い切り、豊かな老後を過ごす方法の一つとして検討する価値はあるだろう。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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