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一語千金

子会社

[subsidiary company]
「会社の子ども」の作り方

玉手義朗(エコノミスト)

「子どもがなかなかできなくて…」と、知人夫婦がため息をつく。「最低二人、できれば三人…」と、にぎやかな家族を作ることを夢見ていた二人だったが、結婚10年を経ても子宝に恵まれない。懸命の不妊治療も実を結ばないことから、養子縁組も考え始めたという。
 企業にとっても「子会社」は重要な存在だ。子会社とは財務や事業方針の決定を親会社に支配されている企業のことで、一般的には議決権を持った株式の過半数を保有しているのが親会社、保有されているのが子会社となる。親会社にすべての株式を保有されている場合は完全子会社という。株式会社の経営方針は、株主の議決で決まることから、子会社が親会社の方針に従うという「親子関係」が生まれるのだ。
 子会社は親会社が「出産」することで誕生する。企業が多角化を進める場合、社内に専門の部署を作るのではなく、社外に子会社を設立し、「独立採算」で事業展開した方が効果的な場合がある。そこで、親が子どもを産んで育てるように、自社の資金を投入して子会社を設立、人材や経営ノウハウなどを提供しながら、成長させて行く。
 子会社は「養子縁組」でも作ることが可能だ。すでに活動中の企業でも、その株式の過半数を取得できれば子会社にできる。「我が社の子どもになりませんか?」と働きかけて株式を買い集め、養子になることを納得してもらえれば、「親子関係」が成立する。
 しかし、「あなたの子どもになんてなりたくない!」と、子会社化が拒否されることも少なくない。経営の自由が奪われる上に、都合よく利用される恐れもあるからだ。こうした場合、「TOB」(株式公開買い付け)などによる「買収」に発展、強引な子会社化が図られることもある。
 ライブドアの社長だった堀江貴文氏が2005年に仕掛けたニッポン放送の子会社化計画はその典型だった。圧倒的な資金力に物を言わせ、嫌がる子供を強引に養子にしようとするやり方は大きな批判を浴びたが、これも子会社を作る方法の一つなのだ。
 一方、企業支援のために子会社が使われることもある。経営の悪化した企業を支援企業が子会社化、親が病気の子どもを看病するように、資金面の援助をすると同時に、経営陣を送り込んで再建を進めて行く。
 その一例が大手スーパーのイオンによるダイエーの「完全子会社化」だ。14年9月、イオンは経営が悪化していたダイエーの全ての株式を取得して、完全子会社にする方針を表明した。これによって倒産の危機を逃れたダイエーだが、その店舗は全てイオングループの新ブランドに変わり、おなじみのオレンジ色の看板も姿を消すという。13年からダイエーの経営支援をしてきたイオンだが、思うような成果が出なかったため、子会社化の中でも最も強力な完全子会社化によって、抜本的なリストラを進めることにしたのだ。
 ソフトバンクはアメリカ進出を進めるために、全米3位のスプリントを子会社化したが、養子縁組の費用は1.8兆円と巨額に上った。一方、高級品を扱うスーパー「成城石井」を巡っては、ローソンと三越伊勢丹が「ウチの子供になって…」と買収合戦となり、最終的にはローソンの子会社になることが決まった。
「子はかすがい」ということわざは、企業にも当てはまる。子会社をどのように作り、どのように運営して行くかは、企業経営にとって重要な課題なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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