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一語千金

グローバルインバランス

[global imbalance]
「革命前夜」の世界経済

玉手義朗(エコノミスト)

 18世紀後半、絶対王制下のフランスでは、民衆の不満が高まっていた。国家財政は破綻寸前だったものの王侯貴族は贅沢三昧、重い税金に苦しむ民衆との間に極端な格差が生まれていた。人々の不満は遂に爆発、1789年フランス革命が勃発し、王制は崩壊する。
 現在、世界経済も同様の状況に置かれている。原因は「グローバルインバランス」、世界規模で発生している経常収支の不均衡(インバランス)だ。経常収支は、モノやサービスなどの貿易収支、お金の出入りである所得収支などを合算したもの。世界経済では、巨額の経常赤字を抱える国がある一方で、黒字を出し続ける国があるなど、大きな不均衡が生じている。
 グローバルインバランスの元凶となっているのが、膨大な経常赤字を計上しているアメリカ。経常収支の赤字は、自らが働いて稼いだ分以上に消費していることを意味している。アメリカは、働かずに借金を重ねることで贅沢を続ける「王侯貴族」なのだ。
 アメリカの浪費を支えている「民衆」にあたるのが中国や日本、ドイツなどの経常黒字国で、ここに大きなグローバルインバランスが生じている。
 アメリカが経常赤字を出し続けられるのは、ドルが国際経済の基軸通貨だからだ。アメリカが輸入をした場合、代金をドルで支払うことができるが、これは基軸通貨だけに許される特権。このため、アメリカはお札を刷り増すだけで、無尽蔵に輸入ができてしまう。
 アメリカにとってさらに都合がよいのは、海外に流出したドルが自国に再投資される点だ。ドルを受け取った国が、アメリカから何かを買おうと思っても魅力的なものがない。そのため、使い道のないドルはアメリカの株式や国債、不動産などへの投資に回されることになる。中国がアメリカ国債の最大の保有者であり、日本の保有額も極めて大きいのは、アメリカとの貿易黒字などによって受け取ったドルの使い道が国債以外に見つからないためなのだ。
 これがアメリカに「バブル」を発生させる。1990年代末の「ITバブル」、不動産バブルの一種である「サブプライム問題」など、アメリカでバブルが続発するのは、グローバルインバランスで発生した大量のドルが引き起こすアメリカ国内への過剰投資が一因だと考えられている。
 しかし、経常赤字国が大きな顔をしているというグローバルインバランスは、いずれ崩壊する運命にある。大量に発行されたドルはやがて信頼性を失い、アメリカは紙幣の増発による浪費ができなくなる。アメリカの国債の信用力も失われ、株式市場も崩壊するだろう。グローバルインバランスは崩れ、新たな均衡へと動き出す。それは、経常赤字国のアメリカが没落し、経常黒字国、中でも中国が世界経済の覇権を握ることを意味する。
 2009年、サブプライム問題に伴う金融危機は、その前兆だった。この時、アメリカの消費は落ち込み、経常赤字は解消する方向に動いたが、長続きはしなかった。
 しかし、11年の夏、アメリカ国債の格下げやドル相場の急落が発生、世界経済は再び大きく動揺しているが、これはグローバルインバランスを解消しようとする大きなうねりにほかならない。アメリカが君臨する「旧体制」が崩壊し、中国を筆頭とした「新体制」へ向けた「革命」が始まろうとしているのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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