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一語千金

金融調節

[money market operations]
日銀が操作するお金の量

玉手義朗(エコノミスト)

 日本の中央銀行である日本銀行(日銀)は、経済活動に不可欠な貨幣を供給している。その方法は一般の商品と同じで、まず民間銀行に貨幣を「卸し売り」し、それを民間銀行が企業や個人に「小売り」する、というプロセスとなる。貨幣の供給量が増えれば、貨幣の価格である金利は下落、減れば金利は上昇する。この貨幣の供給量の調整が、金融政策の根幹である「金融調節」であり、その基本方針は、金融政策決定会合で決められている。
 日銀が貨幣を卸すのが「コール市場」だ。コール市場では、資金の余っている銀行が、不足している銀行に資金を貸し出すなどのやり取りが行われていて、期間や担保の有無で幾つかの種類がある。この中で、日銀が資金を卸しているのは、「無担保・翌日物」の市場。無担保で、今日借りて翌日返すという最も短い資金の貸し借りが行われている市場だ。
 一般の市場と同様に、コール市場でも、商品である貨幣の供給が減れば、「品不足」となって価格の上昇、つまりコールレートと呼ばれる金利が上昇する。反対に、供給が増えれば、コールレートの低下(貨幣価格の下落)が起こることになる。そこで日銀は、コールレートを引き上げたいと思えば、貨幣の供給量を絞り、下げたい場合には、供給量を増やす。こうした操作は「公開市場操作」とも呼ばれ、金融調節の主要な手段となっているのだ。
 金融政策決定会合で決められる金融調節の基本方針は、「無担保コールレート翌日物を、0.5%前後で推移するように促す」などとなる。明確に0.5%と決めるのではなく、「誘導目標」を設定するというかたちをとっていて、国家の重大事である金融政策にしては、あいまいで中途半端な印象も受ける。
 かつて日銀では、公定歩合という金利水準を決めて、貨幣という商品を金融機関に「定価販売」していた。しかし、この手法が独善的で、経済の実態を反映していないとの批判を受けてきた。そこで、1996年に方針を転換、金利水準の決定をコール市場に委ね、日銀は貨幣の供給量を調整することで、間接的に操作するようになる。その結果、コールレートは市場の需要と供給を反映して、株価や外国為替相場のように絶えず変動するようになった。一例を挙げると、誘導目標が0.5%に設定されていた2007年6月13日のコールレートは、最高が0.56%、最低が0.4%とかなりの変動幅がある。しかし、その平均は0.503%、金融調節の誘導目標である0.5%におおむね沿ったものになっているのだ。
 日銀が決めるコールレートの誘導目標は、政策金利と呼ばれることもある。これは、公定歩合が存在していたときの名残で、公式にはこうした用語は存在しない。しかし、「金融調節の基本方針である、無担保コール翌日物の金利の誘導目標は…」などとは面倒くさくて言えないので、便宜的に「政策金利」という言葉を使い、その上げ下げを金融調節、あるいは、金融政策と呼ぶようになったのだ。
 日銀の誘導目標に基づいて操作されたコールレートは、「貨幣の卸値」だ。したがって、貨幣の供給量を絞り「卸値」が上がれば、預金金利や貸出金利といった、民間銀行で適用される「小売値」も上がる。反対に貨幣の供給を増やして「卸値」を下げれば、「小売値」も下がる。日銀は貨幣の供給量を調整することで、経済全体の金利水準を動かそうとするわけだ。これが「金融調節」の最終的な目標であり、日銀の最も重要な役目なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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