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一語千金

持ち株会社

[holding company]
企業を入れる巨大な箱

玉手義朗(エコノミスト)

 「持ち株会社方式による経営統合」。企業の統合が行われる際、合併に代わって、しばしば登場するようになった言葉だ。持ち株会社方式が主流になった理由は、合併に比べて経営統合が多くのメリットを持つためだ。
 企業を大きな積み木と考えよう。合併は形も大きさも違う二つの積み木をくっつけるようなものだ。同じ業種であっても、企業風土や賃金体系、仕事の仕方などが異なるわけで、これを統合するのは容易ではない。
 こうした面倒な作業が不要なのが、持ち株会社による経営統合だ。これは、「持ち株会社」という大きな箱を作り、二つの積み木(会社)をそのまま入れてしまうというもの。二つの企業は独立を維持、持ち株会社が全体の利益を見ながら経営を進めていく。従って、持ち株会社は、工場などの設備を持たず、中に入っている企業をコントロールする経営スタッフだけで構成される。持ち株会社は、複数の企業をコントロールするだけの、大きな箱なのである。
 持ち株会社は、合併とは異なり、形の違う二つの積み木を一つにせず、そのまま箱に入れることから、賃金体系を統一する必要もなく、それぞれの会社のままで営業を続けることも可能となる。さらに、業種の違う企業を買収しても、そのまま箱に入れるだけ。事業の多角化も容易にできるメリットがある。
 この持ち株会社の特性を最大限に利用していたのが、戦前の財閥だった。三井・三菱・安田・住友の四大財閥は、いずれも持ち株会社の組織を持ち、傘下に膨大な企業を抱えていた。戦前の日本経済は、財閥という巨大な箱に完全に支配されていたのだ。
 戦後、財閥が侵略戦争を招いた一因だとして、GHQは持ち株会社の設立を禁止する。持ち株会社が再び認められたのは1997年のこと。海外の多くの企業が、持ち株会社方式で事業を拡大している中、日本だけが禁止していては取り残されるという危機感が背景にあったのだ。
 持ち株会社は、支配する会社の株を持つという意味で名付けられたが、“holding company”(=抱え込む企業)という英語の方が、 その本質をとらえている。巨大な箱を作り、企業を次々とその中に抱え込み(holding)始めた日本企業。こうした企業形態は、今後もさらに増え、企業の合従連衡を加速させることになるだろう。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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