imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

一語千金

マクロ経済

[macro economic]
経済を「全体」でとらえる

玉手義朗(エコノミスト)

 離陸、上昇、旋回…。大空をかける巨大な旅客機の動きはスムーズだが、その機体は何百万点もの部品で構成されている。それぞれの部品の動きは、旅客機全体の動きとは無関係に見えるが、これらが一体となって、旅客機の飛行を支えている。
 旅客機を一つの機体として見るか、部品一つ一つで見るか…。この違いが「マクロ経済」と「ミクロ経済」だ。
 経済を巨大な旅客機と考えよう。機体を構成しているのは、個人や企業、そして政府などの膨大な数の「部品」だ。個人が働いて所得を得たり、企業が生産活動をしたりと、部品一つ一つの動きは独立しているが、これらが集約されて、経済という旅客機を飛ばしているというわけだ。
 経済を旅客機の個々の部品としてとらえるのが「ミクロ経済」、個人や企業など経済活動の最小単位に焦点をあてるというものだ。
 これに対して、経済を全体的にとらえるのが「マクロ経済」。巨視的(=macro)という意味を持つマクロ経済は、個々の経済活動が集約されたGDP(国内総生産)や物価、失業率などによって、国の経済状況を全体的に把握する。部品一つ一つの動きではなく、高度や速度、機内温度といった旅客機の全体的な動きに焦点を置くのがマクロ経済なのだ。
 マクロ経済の最重要課題は、持続的な成長の達成だ。GDPは旅客機の高度、その伸び率である経済成長率は飛行角度に相当する。景気がよくなれば機体は上昇、悪化すれば高度は下がる。マクロ経済の目標は、旅客機の高度を安定させ、経済危機という「墜落」を避けることにある。
 物価の安定もマクロ経済の重要な課題だ。物価とは旅客機の「機内温度」に相当する。物価の異常な上昇であるインフレーション(インフレ)や、過度な低下であるデフレーション(デフレ)を避け、国民という乗客に快適な環境を提供することが求められているのである。
 この他にも、燃料に相当するマネーの安定供給、旅客機に乗りたくても乗れない失業者を少なくすることなど、マクロ経済には多くの課題があるが、これらをコントロールする役目を担っているのが、機長と副操縦士に相当する政府と中央銀行だ。
 政府は予算や税制、経済活動の監視や規制、活性化など様々な経済政策を行う。操縦桿(かん)を握り、様々なレバーを操作して、経済という旅客機を操縦するのが、政府という機長の役割である。
 一方、副操縦士である中央銀行の主な役割は、物価という機内温度の安定と、マネーという燃料のコントロール。これによってマクロ経済の安定と成長を実現しようとする。
 マクロ経済の課題を解決するためには、経済システムそのものについての改革や改善も重要な要素となる。景気が低迷するのは、経済の構造に問題があるためではないのか。失業率が下がらないのは、雇用制度に欠陥があるからではないのか。マクロ経済の問題を解決するには、経済政策のみならず経済構造の改革、つまり、旅客機を改造することも重要だ。
 しかし、マクロ経済だけ注目していればよいというわけではない。マクロ経済が安定するためには、ミクロ経済が効率的に動いていることが前提となる。個々の部品の動作に問題があれば、どんなに機長がうまく操縦しても旅客機の飛行が不安定になるのは当然のこと。マクロ経済とミクロ経済がそれぞれ安定することが必須なのだ。
「リーマン・ショック」という乱気流が発生するなど、マクロ経済には多くの困難が次々に襲ってくる。これをいかに乗り切り、国民という乗客を安心して乗せることができるのか…。これこそが、マクロ経済の課題なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。