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一語千金

ポートフォリオ

[portfolio]
お金は分けておきましょう

玉手義朗(エコノミスト)

 外資系の金融機関で仕事をしていた時のことだ。ニューヨークに出張した際、財布を無くしてしまった。財布には、現金、カード、トラベラーズチェックなど、旅行中の全財産が入っていた。
「全財産を一つにまとめておいたら、万が一の時に困ることくらい子供でもわかるだろう。金融のプロなんだから、ポートフォリオをしっかり考えないと…」と、同僚からあきれられてしまった。
「ポートフォリオ」とは、自分のお金(資産)を分散して投資することだ。お金の投資先には様々な形態がある。現金、銀行預金、株式や債券といった有価証券、投資信託に外貨預金、さらにはFX(Foreign Exchange)と呼ばれる外国為替取引のほか、金や原油といった商品取引、不動産なども投資先の一つとなる。
 ポートフォリオは、書類などを整理する「紙ばさみ」を意味する言葉。預金通帳や株式投資の書類などを、種類別に「紙ばさみ」に入れて管理するという意味合いから、資産の分散投資をポートフォリオと呼ぶようになったのだ。
 ポートフォリオでは、自分の資産を、どこにどれだけ投入するかが最も重要なポイントとなる。資産の投入先には、預金のように安全確実だがわずかな利息しか得られないローリスク・ローリターンのものから、株式のように大きな値動きを見せ、場合によっては紙くずになってしまう恐れもあるが、うまくいった場合には莫大な利益が得られるハイリスク・ハイリターンの投資先まで、千差万別だ。
 安全確実だからといって、すべての財産を銀行預金にしてしまうと、資産はなかなか増えない。しかし、値上がりが期待できるからといって、全財産を一つの株式に投資してしまうと、万が一の時には一文無しになってしまう。そこで、例えば「銀行預金と株式投資に3分の1ずつ、残りの3分の1は外貨預金」といった具合に、リスクとリターンのバランスを考えたポートフォリオを組むことが一般的となっているのである。
 どんなポートフォリオを組むかは、個人の資産はもちろん、生命保険会社や年金を運用している基金、一般企業でも重要な問題だ。そこで、多くの学者が、どうすれば最も安全で利益が期待できるポートフォリオを組むことができるのかを研究している。その中心がモダンポートフォリオ理論(modern portfolio theory)で、難解な数式によって、最も効率的なポートフォリオの組み方が提案されている。
 しかし、どんなに難解な理論を使っても、低いリスクで大もうけができるといった夢のようなポートフォリオは存在しない。 
 LTCM(Long Term Capital Management)というヘッジファンドは、ノーベル経済学賞を受賞した学者2人を擁した「金融のドリームチーム」で、最新のポートフォリオ理論を駆使して投資を行った。スタート直後は預けた資産が4倍になるなど大もうけし、預かっていた資産は1000億ドルを超えていた。ところが、最先端の理論に基づいてロシア国債を大量に購入したところこれが暴落、LTCMは瞬く間に破綻してしまったのだった。
 旅行に行った際、一つの財布にお金を集めておくのは便利だが、それが取られてしまっては大変な事態となる。しかし、慎重を期しても財布が盗まれてしまうこともあるのだ。重要なのは、一つ取られても大丈夫なように、小銭入れ、お札入れ、カード入れなどに分けてリスクを分散すること。これが「ポートフォリオ」の基本的な考え方なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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