imidas - 情報・知識&オピニオン

探究

カルチャー

異業種見参!化粧品業界戦国時代

食い合いか、拡大か、市場の行方

加藤智一(美容ジャーナリスト/エディター)

 高機能化粧品やメーキャップ商品の売り上げが好調なことから、2005年より再び拡大している国内の化粧品市場。その勢いに乗じるかのように、化粧品業界へ異業種からの新規参入が相次いでいる。資生堂、花王、コーセー、カネボウの大手4社がしのぎを削る市場に、新たな活路を見いだした異業種企業。果たしてその勝算はあるのだろうか。

新規参入の大きな要因

 そもそも、化粧品市場への新規参入が相次いだ理由は二つある。
 一つは、2005年の4月に施行された改正薬事法において、化粧品の安全対策が、製造販売事業者に一本化されたこと。商品に製造元表記の義務が不要になったことから、化粧品製造のアウトソーシング環境が整った。その結果、化粧品になじみがないメーカーでも技術提供が可能になり、直接あるいは間接的な参入を加速させた。
 二つ目は通販市場の拡大である。女性誌や美容専門誌の充実から、日本女性の化粧品に関する知識が向上したことや、インターネット上で商品の詳細が確認できるよう情報が整理されたことで、ネットショッピングが定着。いまや通販は、テレビのショッピングチャンネルなどの動画媒体も巻き込んだ、主要な販売チャンネルへと成長を遂げたのである。

異業種コスメの武器

 こうして化粧品業界への門戸が開かれたことが、異業種が参入する大きな要因となったが、各メーカーは、すでにこの市場で独自のポジションを確保しつつある。その基軸となったのが、異業種ならではの“ハイテク技術”だ。医薬分野で培ったテクノロジーで、厚生労働省から「メラニンの蓄積を防ぐ」などの効能効果を取得した大塚製薬や、オートバイなどの排ガス対策が転じて、抗酸化作用の強い天然色素のアスタキサンチンを大量培養する技術を確立したヤマハ発動機など、自社の得意な技術を再構築して、化粧品に応用できるという強みがあった。そのため、肌に皮膚科学的に働きかける“機能性”という高付加価値を化粧品に与えられたのである。

ロート製薬の成功

 その最たる成功例が、01年から「Obagi(オバジ)」ブランドを展開しているロート製薬だろう。世界的に有名なアメリカの皮膚科医である、オバジ博士の肌再生理論に基づいて開発された製品は、薬品のようなシンプルなパッケージと、肌の修復機能に働きかけるという薬学的な肌効果が特徴。化粧品のもつ華やかなイメージとは一線を画したコンセプトだったが、逆にそのストイックな個性とイメージが、美容意識が高い層を刺激。製薬会社という効果優先のイメージも追い風になり、きれいになったという印象だけではなく、確実に肌が整っていくという評価を得るまでに至った。
 その後も、手ごろな価格帯ながら、医薬品の製剤技術を生かした「肌研(ハダラボ)」や、抗酸化素材として注目を集めた白金ナノコロイドを配合した「オバジプラチナイズドシリーズ」を発売。機能性コスメの立役者として、業界での存在感を確立した。
 また、自社固有の素材をスキンケアだけでなく、医薬品にも応用すると発表したのが、アスタキサンチン配合の化粧品を発売した富士フイルムだ。長年のフィルム研究で蓄積された技術や素材を用いて、先進医療素材を開発し、医薬品に生かす事業を推進している。その過程で画期的なスキンケア成分が開発されるかもしれない。

高まる美への欲求と市場の可能性

 このように化粧品業界が活性化する一方で、少子高齢化から、その市場規模は、横ばいか、長期的にも大きな成長は見込みにくいという声もある。しかし、人々の美容意識が進化し続けている現代では、市場はさらなる発展を遂げる可能性が高い。
 なぜなら、一度高まった美への意欲は、決して冷めることがないからだ。それは07年から定年退職を迎え始める団塊世代にも該当する。シニア世代に向けた新女性誌、男性誌の相次ぐ創刊に象徴されるように、団塊の世代は、年を重ねても美しさを維持したいという欲求が強い。その傾向は、アンチエイジングや高価格・高機能をアピールした化粧品が売り上げを順調に伸ばしていることからも明白である。だから、異業種が“本業”で培ってきたコア技術を美容や医療に生かすことは、健康で美しくありたいと願う彼らに応えることにもなる。そのニーズをとらえているからこそ、メーカーは積極的な市場参入を果たしたのだろう。
 最先端技術に裏打ちされた成分で勝負する“異業種コスメ”。確実な肌効果を狙った化粧品は、人々の美への欲求にパワフルに応えるという、新たな“効き目”を生み出す可能性を秘めている。

著者情報

美容ジャーナリスト/エディター

加藤智一

かとう ともいち

女性誌『25ans(ヴァンサンカン)』(ハースト婦人画報社)をはじめ、多くの女性誌の美容担当を経て独立。スキンケア・メイクアップから美容医療まで、あらゆる美容情報に精通。現在は、女性誌を中心に、男性誌、WEB、新聞など、さまざまな媒体で活躍している。著書に『お洒落以前の身だしなみの常識』(講談社、2013年)、『思わず触れたくなる美肌をつくる 身だしなみメイク』(講談社、2014年)がある。

関連記事