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社会問題

日本はエコ・フレンドリーの国?

エコロジーは消費者の環境意識から

スヴェン・キリアン(CScout Japan CEO)

日本のJRとメトロはかなりエコ・フレンドリー

 ――キリアンさんは、50カ国以上の国を訪れて、約10年近く日本にお住まいですが、日本のエコロジーについて、どう思いますか?
 S.キリアン 18年前に初来日したときに驚いたのは、交通システムのよさと、プラスチック材でパッケージされた商品の多さです。
 とりわけ日本の交通システムは、世界でも例がないほどすばらしいと思います。地方では生活の場ではまだマイカーが欠かせなくても、日本の都心の公共交通機関は、都心の隅々まで網羅していて、なおかつ運行時間が非常に正確なので、行きたいところへはどこへでも電車で行けるという意味では、世界に誇れるエコ・フレンドリー(環境に優しい)なシステムだと思います。
 自転車で駅まで行ってJRや私鉄やメトロに乗るバイク&ライドは、クルマで駅まで行って駐車して乗り換えるパーク&ライドより、はるかにエコ・フレンドリーです。最近、日本でも始まっているカー・シェアリングも、ドイツでは1980~90年代にはやりましたが、今はあまり人気がありません。ドイツではパーソナルスペースとして、クルマが必要とされているのでしょう。

日本は過剰包装(オーバーラッピング)の国?

 ――プラスチック材で包装された商品が多いのに、びっくりしたというのは?
 S.キリアン 幼い時から言い聞かされているので、ドイツ人は誰もエコ・コンシャス(環境意識)があると思います。始めて日本に来たとき、スーパーマーケットでたくさんの商品が食品用ラップフィルムでパッケージされているのを見て、少なくとも私にはショックでした。「こんなにリサイクルに回せない包装材を、なぜ使うのだろう」というのが第一印象でした。 
 日本のスーパーマーケットでは、野菜も肉も魚も、商品はたいてい発泡スチロール製のトレーに並べられ、ラップでまるごと包装されていますが、包み過ぎではないでしょうか? その上、さらにプラスチックバッグレジ袋)。レジ袋については、最近では「袋は必要ですか?」と聞かれますが、以前は‘漏れなく’という感じで袋が配られていました。

過剰包装のきわみは、一口チョコ

 S.キリアン ちょっとすごいと思ったのは、一口サイズのチョコレートがアルミ箔に包まれて、パラフィン紙で一個ずつ仕切られて箱に入れられ、さらにそれをラップ包装して出荷されて店頭に並ぶという、何とも厳重な包み方です。バレンタインデーのころには、さらに特別に包装され、レジ袋に入れて渡されますね。何重にも包まれたチョコレートを見たときには、ドイツ人の私の目から見るとかなり驚きでした。
 ドイツでは、商品がラッピングされていたら、買ったその場ではがして外身は店頭の分別ゴミ箱に、中身だけをマイバッグに入れて持ち帰るということもよくありますが、これはエコ・コンシャス以前の、できるだけ家に無駄を持ち込まないという生活習慣であると思えます。
 さらに、雨の日に店の入り口のビニール製の傘袋。これも日本で初めて見ました。あれは一回使われるだけで、たぶん二次使用されることなく(燃えるごみに)処分されるんでしょうが、本当に必要ですか? こうした点では、日本はドイツよりエコ・コンシャスが低いように見えます。
 いずれにしても、不必要なサービスのために、やたらに木を伐採したり、エネルギーの消耗につながるような資源の無駄使い的な消費者サービスは、見ていてあまり気持ちの良いものではありません。

瓶のリサイクルシステムが崩壊した日本

 S.キリアン 日本はペット(PET)ボトルやアルミ缶のリサイクル率が高いとのことですが、逆に言えばペットボトルやアルミ缶がたくさん流通しているということですね。
ドイツでは、飲料の容器としてアルミニウムはアンチ・エコ(反環境)的なイメージが強く、現在は目にすることが少なくなりました。紙パックのような容器も、ほとんどリサイクルされます。
 ジュースやミネラルウオーターなど飲み物の容器は、デポジット式のガラス瓶が主流で、空き瓶を店に持って行けば、容器代が返金され、空瓶はリユース(再使用)されるか、劣化していれば熔かされて瓶に再生される仕組みです。
 日本でも昔はビールや日本酒は瓶が主流でしたね。今でもミルクや乳酸菌飲料の宅配では瓶も使われていますが、このシステムが以前のように機能しないのは、アンチ・エコ的で残念です。

ドイツの包装リサイクルシステム

 ―― 日本では「資源ごみ」「可燃ごみ」「不燃ごみ」「ペットボトル」と分かれ、しかもこれまで「不燃」だったものが「可燃」に変更したりと、分別はとても複雑です。ドイツの消費者は、「リサイクルが面倒だ」という意識はないのでしょうか?
 S.キリアン  ドイツは徹底したリサイクルシステムを採用しています。その基盤となっているのは、包装材を可能な限り減らしてそれを再利用する包装リサイクルシステムです。「包装廃棄物規制令」(1991年)によって、余計な包装が少なくなりました。
 日本のペットボトルや紙パックにはリサイクル用の識別マークがついていますが、ドイツでも化粧品のパッケージや食品素材の袋などすべての商品パッケージに緑のポイントというマークがついていて素材別に分別され、分別された素材はリサイクルされます。
 もしドイツでリサイクルされないプラスチック素材の包装材とか、ペットボトルを使えば、エコ・コンシャスが乏しい人と見られますね。面倒なのは日本もドイツも変わりません。ただ慣れはあるかもしれません。

エコ・コンシャスは身近から生まれる

 ――日本では紙の「リサイクル偽装のスキャンダル」がありました。
 S.キリアン リサイクル偽装のような「エセ・エコ」的な事件が起きると、消費者はリサイクルのシステムを信用できなくなるのでエコ・コンシャスが後退します。これはどこでも同じです。そうでなくても、消費者がエコを実践するには、努力が必要です。
 今、エコロジーはファッションとして流行していますが、もしエコが「格好よく」なければ、エコを実践したいとは思わない人もいるでしょう。
 高価なブランドもののエコバッグが買われるのはその現れですが、ブランドのエコバッグがよくないと言う非難は当たらないでしょう。たとえファッション感覚からエコを実践したにせよ、どこから始めてもまちがいではないと思います。感覚に合わないエコバッグを使うより、本人たちが使いたいものからエコを始める方が先決だと思います。
 ただし、ファッション感覚でエコロジーを実践するにしても、本当のエコロジーやエコ・コンシャスについて思考停止になるのは、危険だと思います。
 また個人的にどんなにエコ・コンシャスであっても、目の前にリサイクルシステムから外れたような商品ばかりが並んでいたら、リサイクルを実践しようにも限界があります。
 ですから、効用の怪しい「名ばかりエコグッズ」が販売されていたら、お金を払う消費者の立場として、それを生産した企業に、ネーミングのあり方と、その責任を問いただすべきだと思います。

著者情報

CScout Japan CEO

スヴェン・キリアン

すゔぇん・きりあん

1970年生まれ。ドイツ、ミュンヘン出身。初来日は1991年。50カ国以上の国々をめぐり、2001年に再来日。ニューヨーク、ミュンヘン、北京に拠点を持つシースカウト日本支社長。日本に関心を持つ海外企業の依頼により、市場調査、コーディネート、トレンド分析、ブログ配信等の業務を行う。ユニークな業務内容から、CNN、BBC、NHK、ZDF等のメディアに取り上げられる。なかでも、YouTubeに配信した「人しか見えない人工波の出る屋内プール」に450万件のアクセスがあり、全世界に放送される。「日本のここがすばらしい」という、日本人にも見えにくい日本のすばらしさを配信し続けている。

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