統一地方選2023で女性躍進! 新しく見えてきた希望ーー「男性政治」を変えるのか?
三浦まり(上智大学法学部教授)
日本の政治家は圧倒的に男性が多い。最近では、その弊害が指摘されるようになっている。2018年には政治分野における男女共同参画推進法が施行されている。では、23年4月の統一地方選の結果はどうだったのだろう? 著書『さらば、男性政治』を上梓した三浦まりさんに、現状を分析していただいた。
この4月に実施された統一地方選では、道府県議会、市議会、市長・区長で過去最多の女性候補者・当選者数となった。道府県議会では当選者に占める女性割合は10.4%から14.0%に増え、鹿児島、香川、岡山で初めて2割を超えた。市議会では女性の割合が平均で22.0%、東京都特別区(葛飾区・足立区を除く21区議会)で36.8%、町村議会で15.4%となり、ほぼ男女同数か女性が過半数の議会も複数誕生している(千葉県白井市、兵庫県宝塚市、東京都杉並区、埼玉県三芳町、愛知県日進市、東京都武蔵野市、大阪府忠岡町、奈良県三郷町、北海道新十津川町、東京都清瀬市=統一地方選後半戦で女性割合の高い議会順)。目立つのは首長に挑戦する女性が増え、結果的に女性区長は豊島区、北区、江東区で3人誕生し、東京23区の区長は6人が女性となった。市長では全国で7人の女性が当選をきめた。

今回の統一地方選は政治分野における男女共同参画推進法が2018年に施行されてから2度目となる。前回の統一地方選においても女性が増えたが、今回はさらに女性に追い風が吹いたといえるだろう。旧態依然とした政治の象徴のような男性議員が落選し、新人女性議員が当選するという現象が全国で見られた。これまで都市部を中心に女性議員が多かったが、地方においても女性を急増させる地域が出てきたことが今回の選挙の際立った点である。
ここで留意しなくてはならないのは、全体として確かに女性が過去最多となったが、実は女性議員が減った議会もあることだ。新潟、滋賀、徳島の県議会では女性議員が1人減り、8つの府県議会では現有議席から変化がなかった。
つまりは、全国一律で女性議員が増えたのではなく、減ったあるいは変動しなかった自治体がある一方で、急増した自治体もある。地域格差が広がったのが実情である。どうして地域格差が生まれたのだろうか。女性が増えた議会ではどのような変化が期待できるだろうか。そして、今回増えなかった、あるいは減らしてしまった地域では何が課題なのだろうか。
女性ネットワークの効果
今年1月に出版した拙著『さらば、男性政治』(岩波新書、2023年)は4月の統一地方選をカバーするものではないが、こうした疑問に答えるものである。これまでの研究で、都道府県議会に女性が進出する鍵は「都市化、多党化、非自民の党派力」と言われていた。この傾向は今回の選挙でも確かめられるものの、自民党が強く、都市部とはいえない地域でも女性が増えた点が興味深い。
そうした地域で重要な役割を果たしたのが、女性ネットワークや政治塾であると思われる。鹿児島県では、平神純子さんらの「鹿児島県内の女性議員を100人にする会」が精力的な活動を続けてきており、今回の選挙では市議会における女性ゼロ議会の解消につながった。また、4年前の統一地方選では日本で唯一、戦後一度も女性議員が誕生したことのない垂水市で女性議員を誕生させるべく「100人にする会」が応援に入り、1人を当選させている。彼女たちの継続的な取り組みには頭が下がる思いだ。そして、女性を増やそうという熱気は自民党の対応を引き出し、県議選では女性が改選前の5人から11人へと倍増したが、うち5人は自民党、4人は無所属、2人は立憲民主党である。自民党も女性候補者を多く擁立・当選させたことがわかる。
男女同数議会となった愛知県の日進市では、東海地方の女性議員たちでつくる「女性を議会に!ネットワーク」が女性候補者5人を擁立し、5人が票を掘り起こせるよう連携し全員の当選に繋げたという。こうした動きに女性候補者がいなかった自民党が危機感を抱き、新人女性2人を立て当選させている(「積極出馬 各党に波及 日進市議会 初の女性5割に」『中日新聞』、2023年4月25日)。ここでも女性ネットワークが力を発揮し、そして政党間競争の影響を受け自民党が変化せざるを得なくなったことがわかる。
熊本県議会でも女性は1人から5人へと急増しているが、「くまもと女性議員の会」が結成され、女性のための政治入門塾を展開していた。こうした取り組みが効果を上げたように思われる。熊本での政治入門塾開催は兵庫県小野市の取り組みを参考にしたという。小野市は女性模擬議会やおのウィメンズ・チャレンジ塾を開催することで、女性議員割合4割を達成しており、全国的な好事例として知られている。
筆者も2018年に申きよんお茶の水女子大学教授と共同でパリテ・アカデミーを立ち上げ、若手女性を対象に女性政治リーダー養成のプログラムを提供する活動を続けてきた。今回の統一地方選ではこれまでの100人以上のアルムナイ(修了生)から17人が挑戦し、15人が当選を果たし、手応えを感じている。それだけではなく、修了生たちのなかから、女性が選挙ボランティアに参加することを促す活動や、ハラスメント相談、子育て中の候補者へのサポート、若手女性候補者のサポートなど、さまざまな活動が展開している。こうした多彩な活動が蓄積することが女性議員の増加につながることを、今回の統一地方選の結果が示している。
新しい選挙文化へ
拙著『さらば、男性政治』でも強調したのが、従来型の選挙スタイルが女性や子育てなどのケア責任を抱える人にとって障壁となっている点だ。日本維新の会代表の馬場伸幸氏は「私自身も1年365日24時間、寝ているときとお風呂に入っているとき以外、常に選挙を考えて政治活動をしている。それを受け入れて実行できる女性はかなり少ない」と発言して批判を受けた。小選挙区の実態は残念ながらその通りだろう。だから女性は増えないと開き直るのではなく、四六時中選挙区にはりついて有権者に顔を売り世話を焼く必要がある小選挙区制を廃止すべき理由が端的に指摘された、と受け止めるべきだろう。
もっとも、衆議院の小選挙区とは異なり、自治体選挙は定数が大きく、当選に必要な票数もそれほど多くない。新しい選挙スタイルによって当選する可能性は開かれている。茨城県つくば市議会議員の川久保皆実さんは選挙カーを使わず、街頭演説もせず、WEBサイトや動画作成、ゴミ拾いという新しい選挙スタイルで当選をした。そのノウハウを広げるべく「選挙チェンジチャレンジの会」を結成し、仲間を応援している。統一地方選ではこの会から20~40代の候補者20人が当選したという(うち女性は13人)。トップ当選が6人も含まれるというのは驚くべき成果だ。つまり、「24時間戦えますか」の昭和モデルだけが唯一の方法ではなく、有権者も新しい時代にマッチした、ワークライフバランスのある選挙運動を歓迎しているのである。
地方議会において新しい選挙スタイルが広がってくれば、それはやがて国政にも影響を及ぼすだろう。なにしろ、国政にしても地方選挙にしても投票率が低い。大方の有権者は政治を諦め、議会に関心を持っていない。新しく多様な選挙スタイルが出てくることは、有権者の関心を高める効果を持つのではないだろうか。

三浦まりさんの近著。日本の政治状況をジェンダーの視点で鋭く切り取る
新しい選挙スタイルという意味では東京都杉並区の岸本聡子区長の戦い方も新鮮だった(杉並区長選は22年6月実施)。自分が演説するだけではなく、マイクを有権者に渡し、座り込んで有権者の発言に耳を傾けていたのは印象的だ。杉並区では支持者たちが「一人街宣」を行い、最終的には30〜40人が参加したという(「岸本聡子・杉並区長当選の原動力は…支持者による「一人街宣」活動だった」東京新聞、2022年8月20日)。こうした市民の活動が今回の統一地方選では「杉並区議選ドラフト会議」に発展し、候補者を政策などで選ぶことをサポートする活動が行われた。岸本区長も「杉並は止まらない 決めるのは私たち」のボードを掲げ、一人街宣を行なっていた。こうした活動の結果、投票率は4.19ポイント向上の43.66%。男女がほぼ同数の議会が誕生した背景には投票率向上があったことが窺える。

岸本聡子杉並区長の「一人街宣」の様子
著者情報
上智大学法学部教授
三浦まり
みうら まり
1967年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校政治学博士課程修了。政治学博士。東京大学社会科学研究所研究機関研究員を経て、現職。専門は現代日本政治論、比較福祉国家論、ジェンダーと政治。主な著書に『さらば、男性政治』(2023年、岩波新書)、『政治って、面白い! 女性政治家24人が語る仕事のリアル』(23年、花伝社)、『私たちの声を議会へ――代表制民主主義の再生――』(15年、岩波現代全書)、『ジェンダー・クオータ――世界の女性議員はなぜ増えたのか』共著(14年、明石書店)、『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』編著(16年、朝日選書)ほか。21年にフランス政府より国家功労勲章シュバリエ受賞。