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「憲法ママカフェ」で子どもを守る大切な知識を学ぶ

憲法や集団的自衛権を「ゆる~く」考えよう!

竪十萌子(弁護士)

 ニュースや新聞によく出てくる「集団的自衛権」や「特定秘密保護法」、「憲法改正」について、「興味がない」「よく分からない」「私たちに関係ある?」と思っているお母さん方は多いはず。でも、そういうコトバと「ウチの子の10年後」って全然無関係ではいられないんです!
 それでも「子どもを連れて出かけられない」「政治の話題を話せる人がいない」と思っている人へ、子連れOK、ランチありのゆる~い雰囲気の中、○×クイズ形式で進める憲法講座、「憲法ママカフェ」を紹介します。

「憲法ママカフェ」とは?

 たとえば平日の午前中、公民館の和室をのぞくと、30~40代を中心に、10人程度、時には30~40人の女性が集まっています。半数以上は子ども連れ。1~2歳の子は遊んだり、走り回ったり。赤ちゃんをあやしたり、授乳したり、隅でおむつを替えたりしているお母さんもいます。
 ママ友のお茶会に見えますが、ここで私が話すのは「憲法」や「集団的自衛権」などについて。ママたちはみなさん、真剣にレジュメを見つめ、講義に耳を傾けてくれます。ゆる~く気軽に「憲法って何?」を考える集まり、それが「憲法ママカフェ」です。
 前々から構想があったわけではなく、実は突発的に始めたもの。2014年6月ごろ、安全保障法制と集団的自衛権をめぐる報道に、私は強い危機感を覚えました。なぜなら、集団的自衛権行使容認とは、日本が攻撃されていない時にも他国の戦争に日本が参加する、ということなので、近いうちに、自分の子どもが戦争に巻き込まれることになる!と思ったからです。とても平静ではいられませんでした。しかし、もっと衝撃だったのは、身近のママたちが、関心を持っていなかったことです。集団的自衛権については、「よく分からない」「中国とか怖いから、自衛隊が戦争に行って私たちを守ってくれるならいいんじゃない?」などと他人ごとでした。
 しかし、戦争協力として自衛隊を海外に派遣した時点で、他国から憎しみを買い、日本でもテロが起こる可能性が格段に高まります。また、いずれ派遣されるのは一般家庭の自分たちの子どもである、という可能性を認識しているママたちがあまりにも少ないことに衝撃を受けました。
 ともかくママたちに、今政治の世界で何が起こっているのか知らせることから始めないと、と強く感じました。ちょうどそのときに「明日の自由を守る若手弁護士の会」(通称「あすわか」)が、憲法を知ってもらうために「憲法カフェ」という催しを開いていると知ったのです。そこで私はママを対象に、レジュメは簡潔に、子どもを連れて来やすいように和室を借りて、ランチも取りながら、などと工夫し、14年9月から憲法カフェを開いてみることにしました。

ママカフェ拡散中!

 政治の問題は、個人の信条に関わることなので、見ず知らずの他人から「『憲法カフェ』を開きます」と呼びかけられても、宗教や政治活動に巻き込まれるのでは、と警戒してしまい、行きづらいものです。しかし、自分の仲が良い人から「この憲法カフェいいよ」と誘われれば、「政治のことは全然知らない」という人も、「この人が言うなら行ってみよう」と安心して参加できる。
 そこで、この憲法ママカフェは、すでにあるコミュニティに私が出向いて、憲法などの話をする、というスタイルにしました。そして、ママカフェに来てくれた人に、次は自分の別のコミュニティで開催してもらい、広げていくことを目標にしました。
 実際やってみると、必ずと言っていいほど、「次は私が企画します」と言ってくれる人が現れ、ママカフェは私の予想を超えて次々に広がりました。半年間で40回を超えるペースとなりました。
 平日昼間ですから、やはり専業主婦がほとんどですが、たまに夫婦連れや男性一人の姿も。最近では働くママも来られるよう、土日の開催も混ぜています。
 開催場所は公共の施設、個人宅、幼稚園、保育園などさまざまです。

○×クイズ形式の憲法講座

 ママカフェでは、まず○×クイズを解いてもらいます。その後、一問ずつ解答を訊き、正解を解説しながら進めていきます。
 問題を解いてもらうと、普通に暮らしている人にとって、憲法がいかに遠いテーマなのかがよくわかります。
 たとえば「日本の主役・日本のあり方を決める人は国民である?」という設問は憲法の基本その1。政治家だと考えてか、不正解の×を選んでしまう人は1~2割と少なめですが、ゼロではありません。
 誤答率が一番高い設問、「憲法を守らなくていけないのは国民である?」は、憲法の基本その2。経験上、8割の参加者が○を選びますが正解は×。憲法99条には、憲法を尊重し、擁護する義務を負うのは「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」であると明記されています。
日本国憲法は国家権力を縛るものである」という、日本国憲法の大原則である立憲主義が、普通に学校を卒業しただけでは身につかない、という実態が分かりました。学校での憲法教育の限界を感じます。ママカフェではこの設問が一番重要だと話しています。とにかく「日本国憲法とは何か」と聞かれたら、「国家権力を縛る法律」であることを、一番に知っておいて欲しいと思っています。
 集団的自衛権も、政府内ではどんどん議論が進んでいますが、集団的自衛権とはそもそも何か、を多くの人たちが知らないのが現状です。
 たとえば設問「(集団的自衛権を認めないと)日本を守るために武力行使はできない?」の正解は×。今のままでも、日本は、個別的自衛権により必要最低限度の武力行使を可能としています。よく、「日本が攻められた時、何もできないのはおかしいから、集団的自衛権を認めるべき」と言う人がいますが、これは間違いです。集団的自衛権は、日本が攻められていない時の話。日本が攻められた時にどうするか、は個別的自衛権の話です。この設問は7割くらいの人が間違えます。
 設問「国際法上、戦争は『違法』?」。正解は○ですが、これも半数近くが間違えます。「戦争はよくない」と思いつつ、「でも世界中で戦争が行われているから合法なのでは」と×を上げるのです。
 憲法ママカフェを続けてきて、正解率が一番変化したのは「日本が他国で戦争をしたら、死傷するのは戦っている自衛隊員のみで、日本にいる日本人が死傷する可能性はない?」という設問です。
 もともとはテロを念頭に作った設問ですが、15年にシリアで日本人人質殺害事件が起こる前は、かなりの人が○と答えていました。国内でテロを起こされるという考え自体がなかったようです。しかし人質事件以降、正解率が上がりました。痛ましく、衝撃的な事件ですが、それだけ多くの人に影響を与えていると感じます。

ママたちに考えて欲しいこと

 この集団的自衛権や、特定秘密保護法や憲法改正の議論は、どうすることが抑止力であり、日本の平和を守れるか、という問題につながっています。これはとっても難しい問題なので、ママたちに一生懸命考えて欲しいと思っています。
 集団的自衛権や特定秘密保護法や憲法改正に賛成する理由は、他国の戦争に参加することで他国との絆を強める(つまり他国に日本のために血を流してもらう代わりに、日本も他国のために血を流す)。その結果、日本を攻めたら他国も黙っていない、となるため、日本を軽々に攻めてくる国はなくなる。それが抑止力となり日本の平和を守れる。また、これだけ世界で戦争があるので、日本もアメリカなどの戦争に協力することこそが、国際平和を守り、日本の地位を高め、日本の平和をも守る、という考え方。
 これに対し、反対する理由は、どこかの戦争に一度でも参加すれば否応なしに戦争に巻き込まれてしまう、だからどこの国の戦争にも加担しない、そのことこそが抑止力となって日本の平和を守れる。また、国際平和を守るためにも、武力をそもそも持たない、戦争には一切参加しない、武力によらない解決方法を絶対的に貫くという姿勢こそが戦争をなくす結局の道であり、日本の価値や地位を高め、日本の平和をも守るという考え方です。これは憲法9条の考え方ともいえるでしょう。
 どちらが正しいといえるものではありません。どちらを選ぶかを考え抜かなければいけない大変難しい問題です。ただし、この問題を考えるときには、一つの前提がないと、議論がかみ合わなくなると思っています。それは、賛成派の言う「日本や他国のために、血を流す」の「血」とは、他の誰でもない「自分の子どもたちの血」ということです。
「国民たるもの、国のために血を流す覚悟を持つべきだ」という考え方は、一つの選択です。賛成を選択する場合は、この覚悟を持っていることが前提となると思っています。自分や自分の子は死にたくないけれど、誰かが戦って日本を守って欲しい、というのは、現実として筋が通りません。
 もし、「うちの子が死ぬのは嫌だ」と思うのなら、賛成を選択することはできないと思います。自分の子が戦って死ぬのが嫌なのであれば、自衛隊員も他国の兵士も「血を流さない」、死傷しない道を、真剣に議論するしかないでしょう。どんな事態になっても誰も血を流さない方法を選ぶんだ、という強い意志が日本にあれば、血を流さない解決法はいくらでもあるはずだと思います。

暮らしや命の土台になるのが政治

著者情報

弁護士

竪十萌子

たて ともこ

1981年埼玉県生まれ。中央大学法科大学院卒。同大学院一期生の弁護士。埼玉弁護士会、埼玉中央法律事務所所属。女性や子ども、貧困、労働、刑事等、地域に密着した問題に精力的に取り組んでいる。弁護活動は、NNNドキュメントの「反貧困のオンナ」や、雑誌「女性自身」の中の「シリーズ人間」等、数多くのメディアに取り上げられている。

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