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政治・経済

日本の領土が中国に買われている!

外国政府・外国資本の土地取得に早急な対策を

田村秀(新潟大学法学部副学部長・教授)

 新潟市で中国総領事館に民有地が売却された。当初は新潟市が小学校跡地を売却しようとしていたが、住民から反対運動が起こり、結局は新潟県庁近くの土地が中国政府に購入されてしまった。日本の土地を中国に売却することに問題はないのだろうか。

新潟の土地を中国に売却した

 新潟市に中国総領事館が開設されたのは2010年6月、当初はコンベンションホールの朱鷺(とき)メッセに併設された万代島(ばんだいじま)ビルの20階に事務所を構えていた。韓国とロシアの総領事館もここに入居している。しかし、そのわずか2カ月後に中国は、新潟駅からわずか500メートルの中心街に位置する約5000坪に及ぶ旧万代小学校跡地の買収を新潟市に打診し、篠田昭新潟市長は売却に向けて住民説明会を開催するなど前向きの対応を行った。
 当初は住民からの反応は鈍かったものの、9月に沖縄県尖閣諸島沖中国漁船衝突事件が起きたことなどから反対運動が活発化し、新潟市議会が土地の売却方針を見直す請願を採択したことによって、11年3月、新潟市長は売却を事実上断念した。
 このように土地売却問題は、いったんは棚上げになった感もあったが、その後、新潟県庁近くの5000坪の民有地が中国側に売却されてしまったことが明らかになった。同時期、名古屋でも中国総領事館に国有地を売却する動きがあったが、こちらは一応止まってはいる。この違いはなぜか。

信じられない外務省の対応

 名古屋では河村たかし市長や大村秀章愛知県知事らが政府に対して慎重な対応を求めているが、新潟市長だけでなく、新潟県知事も土地売却に前向きだったと報じられている。泉田裕彦新潟県知事は中国総領事が提案した中心街への中華街構想に賛意を示すなど、中国寄りの姿勢が目立つ。知事が経済産業省時代に出向していた岐阜県では、伊藤忠商事との連携に奔走していた。当時の伊藤忠会長が、尖閣諸島土地購入などで中国べったりの発言をしたことで批判を浴びた丹羽宇一郎中国大使だったというのは、単なる偶然なのだろうか。
 12年2月には衆議院予算委員会で外務省の信じられない対応が明らかとなった。名古屋や新潟の総領事館の土地取得で便宜を図れば、日本側の不手際で止まっている北京の日本大使館に関する建築確認について配慮する、と中国側が求めてきたのに対して、配慮してほしい旨の口上書を外務省が渡してしまったというのである。
 玄葉光一郎外務大臣は、大使館と土地取得はバーターではないと発言したが、このことは相手国の自国に対する待遇と同様の待遇を相手国に付与するという、外交相互主義の観点からしても問題だ。中国では外国政府にも企業にも、そして個人にも土地の売却は許されていない。中国にある日本の大使館や領事館の土地はすべて賃貸借である。中国との間では相互主義にはなっていないのである。

法律はどうなっているのか

 そもそも、総領事館など在外公館の敷地内は日本の法律が及ばない治外法権の世界だ。5000坪の土地が買われたということは、それだけ中国の領土が日本に誕生したことにほかならない。それがしかも日本海側で信濃川沿いの土地ということになれば、さまざまな憶測が生まれるのも無理からぬことだ。20人足らずの職員しかいない総領事館に、これだけ広大な土地がなぜ必要なのかという疑問も残る。警備という面でも中国総領事館の土地取得は日本側に大きな負担を強いることになる。
 それでは、法律はどうなっているだろうか。外国政府の不動産に関する権利の取得に関する政令によって、外国政府の不動産取引を制限することは可能となっているが、中国をはじめ、ほとんどの外国政府は告示によって対象外とされ、実質的には北朝鮮のみが対象とされている。
 一方、長崎県対馬などでの韓国資本の土地買い占めなどをきっかけとしてクローズアップされたのが、外国人土地法だった。この法律は1925年に制定されたもので、第1条で日本人や日本企業に対して土地に関する権利を禁止したり制限したりしている国に対して、同様の規制をすることができる旨規定していて、現在も効力を有している。政令を制定すれば、中国に対して土地取得の規制を行うことは可能なのだが、残念ながら活用されていないのだ。
 なお、アメリカでは、外交使節団法が相互主義を原則としているため、中国政府による土地所有は認められていない。

外国資本による土地取得に規制を

 土地問題は、中国政府によるものだけではない。全国各地の水源地や米軍や自衛隊の基地周辺、国境が間近な離島の土地などで、外国資本による土地の買い占めが顕在化している。わが国では事後の届け出のみが義務付けられている。土地の買い占めに危機感を抱いた一部の地方自治体では事前の届け出を義務化するなどの動きが出ているが、焼け石に水の感は否めない。どの程度、外国資本によって日本の土地が買われているか、正直なところ正確な把握すらされていないのだ。
 諸外国では外国資本の農地の買収に政府が規制を設けるなど積極的な対応がなされているところが多い。特に中国や中東の資本による大規模な土地の買い占めには反発も広がっている。最近では中国資本家がアイスランドの300平方キロメートルの土地を買い占めようとしたことに対して、政府が不許可にしたケースがある。
 国益を損なわないためにも、外国政府だけでなく、外国資本の土地の取得に対しても包括的な対策を行うことが急務である。具体的には外国政府に対しては相互主義の徹底を基本とし、外国資本に対しては水源地や基地周辺など国益上重要と考えられる土地の取得についての許可制や禁止区域を設けるなどの規制を設けるのである。すなわち、外国人土地法を早急に時代に合った形で全面的に見直し、実効性のあるものとすることが望まれる。

著者情報

新潟大学法学部副学部長・教授

田村秀

たむら しげる

1962年生まれ。東京大学工学部卒。国際基督教大学博士(学術)。自治省、香川県企画調整課長、三重県財政課長を経て現職。専門は行政学、地方自治、公共政策。著書に『道州制・連邦制』(2004年、ぎょうせい)、『自治体ナンバー2の役割』(2006年、第一法規)、『自治体格差が国を滅ぼす』(2007年、集英社新書)、『B級グルメが地方を救う』(2008年、集英社新書)、『暴走する地方自治』(2012年、ちくま新書)などがある。

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